田中 うろこ

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2/20/2025, 9:24:57 AM

全世界5日前仮説。

5分前仮説というのはインターネット界隈じゃ有名な話。私たちが見てる世界は全て5分前にできたと言われても反論はできない。なぜなら、証明するものが記憶しかないのに、記憶すら作り物のレッテルを貼られてしまうから。

だけどそれが、5日前だと言われたらどうだろう。5日も前のことなんて事細かには覚えていないし、それより前のことも、余程大きなイベントでない限りは忘れていく一方だ。私はつい5日前に生まれた。ここに住み、友と学びあった17年間の思い出もある。しかし、私はつい5日前に作られたという記憶もある。

一日目は、細胞のような何かだった。
二日目には、いくつものそれが集まって私が生まれた。
三日目になると、世界が生まれて、家族や友人などの繋がりが設定されてくる。
この時点ではまだ、世界は世界という情報のみであり、風も吹かなければ日も射さない。言うなれば時は止まっている。

四日目でついに、情報が肉体という容れ物にしまわれ、世界に配置される。私は地球の中の日本にいるが、三つ隣の銀河の、名前も表記できない星に配置された存在もいる。

五日目。私たちが単位だった時から今の暮らしに至るまでの全てを忘れて、時が流れ始める。
この世は広い広い箱庭で、何者かの自由によっていくらでも形を変える。私はその記憶を持っている。それもきっと、その自由な閃きの中にあるだけの話なのだと思う。

「ねえツムギ、アイス溶けてるよ?」
「ああごめんレイラ、考え事してた」
「何?また好きな人のこと?」
「ううん、1週間前に出た宿題忘れちゃって」
「いま思い出したのか、ツムギどんまい」
「えへへ、あ! レイラ!アイスやばい!」
「食べな〜」
「あ、そうだ!言うの忘れてた」
「なになに?」

「(ここに題名を入力)」

2/17/2025, 5:48:04 PM

もちもち、すべすべ、しゅわしゅわ。
これらは私が焦がれてやまない感覚たち。もちもちとしたほっぺは見ているだけで癒されるし、すべすべとした大理石の床は触っても寝転がってもいい。しゅわしゅわとした細かな気泡たちが動いているのを見ていると、本当に心は浮き足立ってくる。その感覚をたくさん覚えておきたい。

けれど、全部の感覚をもってしても、それよりももっともっと焦がれるものがある。

それが、きらきら。

寒い日に星が光って、体育館の特別な日だけ照明が凝り始めて、好きな人の笑顔が眩しくて。全部きらきらしている。宝物のメタファーそのもの。掴みたくても掴めない遠さも愛おしいほど。光が好き、輝きが好き。響きも好き。離れているところから届いている実感が好き。

いつかそのきらきらが、私から放たれているんだなという実感を持ちたくて、持ちたくて持ちたくて持ちたくて仕方がない。

2/15/2025, 3:25:42 PM

2/12/2025, 6:13:22 AM

嘘みたいな本当の話をしようと思った。僕は初めて家族以外の人と住むことになった。つまりはそういうこと。でも、僕以外でこれを見てる人が思っている同棲みたいなものとは、だいぶかけ離れたものだ。なぜなら、そいつはヒモだから。

仕送り暮らしのスネかじりと、
元キャバ嬢のヒモ男。

どっちが先に音を上げるのか。楽しみだ。

2/8/2025, 11:09:16 AM

どこまでもどこまでも遠くへ行こうとした。それなら、もうあなたに会わなくて済むから。あの小さなコインランドリーが、大きな大きな鳥かごだったら良かった。いややっぱり、そんなことはない。キャリーケースには数枚の服しか入っていない。彼女と俺の家は、彼女と新しいヒモの家になる。古くてほつれた紐は、捨てられてどっかに行くのが正解。オマエと一緒にやったあやとりも、ボロボロになってポケットの中。喪失感が心を占めるのは、彼女に捨てられたからか。もうとっくに冷めきった恋なのは分かっていた。だからこそ原因はそこにないことがわかっている。数少ない荷物、観葉植物の鉢。大きくて肉厚な葉が、歩くリズムに合わせて揺れる。行く宛てなんてない。ない。宛てはないけれど、寄り道くらいはしてやろう。

「洗濯機、割り勘する?」

ぽつんと待つ人影がいた。咄嗟に、ポケットの中にあった古いあやとり紐を押し付ける。オマエは、そこで待っていた。コインランドリーで、滅多にかけない乾燥機がひとつだけ回る。偶然会う日を待っていたとして、どれだけ待っていたのだろう。彼女以外と話す唯一だったから、思い入れがない訳じゃない。だけど、そんなことがあるか。

「一緒に住もうって、言ってんの」

そんなことがあっていいのか。確かに俺は彼女と別れたばかりだけど。オマエは、言ってやったと満足げで、目の奥に不安がにじんでいる。ああ神様。俺の救いの糸は、こんなに太くて不格好なんでしょうか。行く宛てなんてない。断ろうにも、屋根と壁がある場所というのは、なんとも魅力的だ。オマエの目はいかにも真剣で、面倒になってくる。だって、利用するのに気が引けるじゃないか。お前も洗濯機を買う甲斐性がないんだから。

「僕らがいるところが、僕らの未来ってこと」

ああ、負けだよ。空っぽなスーツケースを転がしてコインランドリーを出る。乾燥機は回っているのに、オマエの自転車置きっぱなのに。俺が忘れた鉢植えを携えて、俺の横に並んで歩きやがる。足取りも弾んでる。俺良いって言ってないよ。

『俺らの居る場所が、俺らの未来』

じゃあ、手始めに電気屋にでも行こうか。

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