【過ぎた日を想う】
同窓会で、あの子たちと再会した。
仲違いして別れたきりの、あの子たちと再会した。
一人は、あの頃よりも随分と大人びて、けど笑った顔はそのまま。
一人は、結構雰囲気が変わって、仕事だったのかスーツ姿でかっこよくて。
一人は、簡単に会うことのできないくらい遠い存在になって。
わたしは、声をかけられないまま、そんな資格もないまま、今日を迎えてしまった。
不意に彼女たちと目が合う。
怖くてすぐに逸らした。
いつからわたしたちの歯車は狂ってしまったんだろう。
あの日、伸ばされた手を素直に取ることができたなら、そんな勇気があったら何か変わっていたんだろうか。
……いいや、きっと変わらなかった。
だってわたしはあの日から何も変わらない、臆病なままだから。
それでもまだ遅くないと思う自分もどこかにいて、気持ちが溢れてしまわぬように鍵をかける。
大丈夫だよ。あの子たちはわたしがいなくても進めるんだから、わたしだってあの子たちがいなくても進めるよ。
そうやって強がっても意味がないとはわかっているけど、そうしないとわたしはわたしですらいられないから。
幼きあの日を思い出す。
いつだって一緒にいて、楽しいことを探して笑っていた。
あの頃に戻れたのなら、せめてもう一度やり直せるのなら、わたしはキミたちに謝りたい。
ただそれだけなんだよ。
【巡り会えたら】2023/10/04
拝啓、名前も顔も知らない誰か様。
この手紙を読んでいるということは、僕はあなたに手紙を届けたことになります。
と言いますのも、僕は今とある実験をしているんです。
それが今行っている、『知らない誰かに手紙を届けたら返事は来るのか』というもの。
昔アメリカだかどこかの子が実際にやって、成功していたこともある実験です。
なので勝算はあります。
僕の実験は九割方成功すると思います。
ただそれにはあなたのお力添えが必要なんです。
だから名前も顔も知らない誰か様。
もしよければ僕を探してくれませんか?
そして見つけた暁には、僕と友だちになってほしいです。
どうかこの短き命の尽きるその前に、僕と巡り会ってください。
【奇跡をもう一度】
あの日のことをキミは覚えているだろうか。きっと覚えていないかもしれない。
なんでもない日だった。それでも僕の記憶には鮮明に刻まれている。
キミは僕を知らなかっただろうけど、僕はキミを知っていたんだ。キミはそれなりに有名だったからね。
言葉を交わしたのはたった数分。
目が合ったのは一瞬だった。
それでも鮮明に残っているのは、キミの泣き顔があまりにもキレイだったから。
忘れてなんかやらないよ。
キミは嫌がるのかな。
それでも僕が覚えている限り、キミがこの世界から忘れられることもないんだから仕方ないよね。
キミが僕を覚えていなくても、僕はキミを覚えているから。
だから笑って幸せに。
ただ、奇跡がもしも起こるのなら、今度はキミと友達になりたい。