土曜日だ!
みんなは休みでも僕は仕事だ!!
気にしない!!!
みんなが休んでる間に僕は成長するんだ!!!!
さぁいこう!!!!!
はぁ、、、、
(どうしても...)
前の晩にどれだけ早く寝ても、朝起きるのが辛い
朝の日差しが鬱陶しく感じる。
それでも社会は待ってくれないし、ため息混じりにスーツを着る。
革靴がいつもよりも重たく感じる、文字通り足取りも重たくなる。
会社に着いた時にはもう体力も気力もない。
ふと、珈琲のいい香りがしたので匂いの先に目を向けた。
背もたれの革がヨレヨレになっていて、書類がまばらに散っている同僚のデスク。
僕よりも先に会社に着いていたのか朝から気合いを入れるために用意したであろう珈琲のカップがパソコンの前に置かれていた。
さしずめ、気合いを入れようとしたはいいがやっぱり一服してからと喫煙所に逃げたな。
そんな情景を勝手に思い浮かべて、フフフと笑った。
仲間はここにも居たんだなと、自分もタバコ持って喫煙所に向かう。
今日も頑張るか!なんて虚勢でも同僚に吐きに行くか。
どうしたって頑張れない時もあるんだし、朝ぐらいは頑張るフリでもしよう。
君がイタズラするもんだから、高いところにその真っ黒なペンを置かせてもらうね。
トタトタと、ずいぶんと大きな音を鳴らす割にはあまり前には進めない歩き方で君がペンのところまで近づく。
顎と頬の肉が口に集まり、不細工な顔になるほどにペンが置かれた棚にピタッと顔をくっ付けて、プルプルと震えるほどに背伸びをして、目一杯に右手を天井に伸ばしても、その小さな手は棚の上のペンに届くことはないだろう。
だんだん、苛立ちと悔しさが見てるこっちにも伝わってきた頃に段々と可哀想になって、近くにあった踏み台の使い方を教えてしまった。
君はハッとした顔をしてその踏み台をよいしょ、よいしょと運ぶと勇ましく踏み台の上に立ち、容易くペンを取ってしまった。
本人は満足そうだ。それを見ていた僕も、壁に立ち向かい乗り越えた君に少しの感動と心弾む期待に満ちた感情が生まれてしまった。
それを後ろで見ていた妻は、なぜ踏み台の使い方をもう教えてしまったのか理解に苦しむのと怒りの気持ちを右手に目一杯に込めていた。
私は妻に立ち向かわずに精一杯に頭を下げるしかない。
『涙』
同じことを繰り返して何も刺激がない毎日には、泣くことも珍しい。
最後に涙を流したのなんていつだっただろうか。
涙を流すような事に巡り会う事さえ変わり映えのしない日々を送る人にとっては幸せな出来事なんじゃないか。
泣くことさえもなくなってしまった日々に、嫌気がさしてしまう。
ただ、、
毎日通う職場の道中にあるベンチの上に、いつから置かれているのかわからない手袋がある。
恐らく子供の手袋と思われるその小さな手袋は片方だけがポツンとベンチに置かれている。
ワタシはそれを透明の袋に包んであげた。
3日前に包んであげた手袋は、今日の朝には無くなっていた。
ベンチの上にはメモが入った透明の袋が置かれていて、そこには 『ありがとうございます』と書かれていた。
少しだけ、涙が出そうになったが、今日は良い気分で1日を過ごせそうだ。
結婚したら、一緒に沖縄に旅行に行こう。
沖縄から帰ってくる時にディズニーランドに2泊して、
ディズニーランドから帰ってくる時は東京を観光しよう。
新婚旅行で連れて行く約束もして、旅行の予約もした。
新婚旅行の1週間前、僕は運転中に意識を失ったまま街路樹に突っ込んだ。
僕は知らないうちに病気を患っていた。
旅行はもちろんキャンセル。
気丈に振る舞っていた君を見るのが尚更と辛かった。
いつか病気が完治したら、旅行に連れて行くからと謝ることしかできずその約束はいまだに叶わない。
君と交わした約束が僕が頑張れる糧になる。
必ず約束を果たす為に、今も気持ちを前へと向けて、
強く強く、一歩一歩と。