君がイタズラするもんだから、高いところにその真っ黒なペンを置かせてもらうね。
トタトタと、ずいぶんと大きな音を鳴らす割にはあまり前には進めない歩き方で君がペンのところまで近づく。
顎と頬の肉が口に集まり、不細工な顔になるほどにペンが置かれた棚にピタッと顔をくっ付けて、プルプルと震えるほどに背伸びをして、目一杯に右手を天井に伸ばしても、その小さな手は棚の上のペンに届くことはないだろう。
だんだん、苛立ちと悔しさが見てるこっちにも伝わってきた頃に段々と可哀想になって、近くにあった踏み台の使い方を教えてしまった。
君はハッとした顔をしてその踏み台をよいしょ、よいしょと運ぶと勇ましく踏み台の上に立ち、容易くペンを取ってしまった。
本人は満足そうだ。それを見ていた僕も、壁に立ち向かい乗り越えた君に少しの感動と心弾む期待に満ちた感情が生まれてしまった。
それを後ろで見ていた妻は、なぜ踏み台の使い方をもう教えてしまったのか理解に苦しむのと怒りの気持ちを右手に目一杯に込めていた。
私は妻に立ち向かわずに精一杯に頭を下げるしかない。
『涙』
同じことを繰り返して何も刺激がない毎日には、泣くことも珍しい。
最後に涙を流したのなんていつだっただろうか。
涙を流すような事に巡り会う事さえ変わり映えのしない日々を送る人にとっては幸せな出来事なんじゃないか。
泣くことさえもなくなってしまった日々に、嫌気がさしてしまう。
ただ、、
毎日通う職場の道中にあるベンチの上に、いつから置かれているのかわからない手袋がある。
恐らく子供の手袋と思われるその小さな手袋は片方だけがポツンとベンチに置かれている。
ワタシはそれを透明の袋に包んであげた。
3日前に包んであげた手袋は、今日の朝には無くなっていた。
ベンチの上にはメモが入った透明の袋が置かれていて、そこには 『ありがとうございます』と書かれていた。
少しだけ、涙が出そうになったが、今日は良い気分で1日を過ごせそうだ。
結婚したら、一緒に沖縄に旅行に行こう。
沖縄から帰ってくる時にディズニーランドに2泊して、
ディズニーランドから帰ってくる時は東京を観光しよう。
新婚旅行で連れて行く約束もして、旅行の予約もした。
新婚旅行の1週間前、僕は運転中に意識を失ったまま街路樹に突っ込んだ。
僕は知らないうちに病気を患っていた。
旅行はもちろんキャンセル。
気丈に振る舞っていた君を見るのが尚更と辛かった。
いつか病気が完治したら、旅行に連れて行くからと謝ることしかできずその約束はいまだに叶わない。
君と交わした約束が僕が頑張れる糧になる。
必ず約束を果たす為に、今も気持ちを前へと向けて、
強く強く、一歩一歩と。
いつまでも、友達として肩を並べているのが本当の理想。
アホな事して笑って、何人か多数で集まって、事あるごとに季節に合わせたイベントで盛り上がって。
お気に入りの音楽や映画を共有して、みんなでお酒でも呑みながら聞いたり観たり。
なのに、最近はなぜかアナタを意識してしまう。
でもやっぱりダメだ、この気持ちは伝えてはいけない。
僕の気持ちに彼女は全く気づいてないだろうし、知らない方がいい。
もし、気づいてるんであれば、、、
アナタからの気持ちを知りたい、、、
何かの間違いで僕の気持ちがアナタに届いてほしい。
僕の口からは絶対に言えない、アナタへの思いを。
『〇〇○さんが、お前の事を気に食わないって言ってたぞ』
ちょっと楽しそうな顔でずいぶんな事を言うじゃないですか。
それを僕に伝えたところで貴方は何をどうしたいんですか?
注意やアドバイスとして言ってるわけじゃないのは分かりきってます。
ただ、暇つぶしぐらいの気持ちなんでしょうけど、こちらが余計なお世話ですよなんて言ったもんなら親切心で言ってるのに、アイツは生意気だ!とか何とか、他の人に言いふらしに行くんでしょう。
貴方は何がしたいんですか??
どんな立場からのご指摘ですか??
貴方は一体、誰ですか??
なぜ、そんな事でしか楽しみを見出せないのか、そんな事でしか人と話が盛り上がれないのか。
ただ、そんな話を聞かされた僕は一日中、頭の中がグルグルと嫌な考えはがりで溢れてしまう。
仲良しこよしでいたいなんて思わない。
刺激し合って切磋琢磨したいとも思わない。
毎日が早く終わってほしいと思うし、毎朝が来るのが怖いよ。
自分を守る為に誰にも話しかけに行かず、誰の顔も見ないようにしていると、段々と皆の顔と声が思い出せなくなってくる。
どっかの誰かさん、こんな僕を見ていて楽しいですか?