君がイタズラするもんだから、高いところにその真っ黒なペンを置かせてもらうね。
トタトタと、ずいぶんと大きな音を鳴らす割にはあまり前には進めない歩き方で君がペンのところまで近づく。
顎と頬の肉が口に集まり、不細工な顔になるほどにペンが置かれた棚にピタッと顔をくっ付けて、プルプルと震えるほどに背伸びをして、目一杯に右手を天井に伸ばしても、その小さな手は棚の上のペンに届くことはないだろう。
だんだん、苛立ちと悔しさが見てるこっちにも伝わってきた頃に段々と可哀想になって、近くにあった踏み台の使い方を教えてしまった。
君はハッとした顔をしてその踏み台をよいしょ、よいしょと運ぶと勇ましく踏み台の上に立ち、容易くペンを取ってしまった。
本人は満足そうだ。それを見ていた僕も、壁に立ち向かい乗り越えた君に少しの感動と心弾む期待に満ちた感情が生まれてしまった。
それを後ろで見ていた妻は、なぜ踏み台の使い方をもう教えてしまったのか理解に苦しむのと怒りの気持ちを右手に目一杯に込めていた。
私は妻に立ち向かわずに精一杯に頭を下げるしかない。
5/8/2025, 11:52:26 AM