NoName

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7/31/2024, 9:29:08 PM

ホッケの開き、私には多すぎる
だから、あなたといたい
暑いとか寒いとか、たわいもない話をしたい
だから、あなたといたい
あなたの代わりは誰にもできない
だから、一人でいたい
















































註:ねこですよろしくおねがいします

7/31/2024, 12:03:55 AM

 澄んだ瞳と言われて真っ先に連想したのは私に噛みつきおったハーディ(仮名)である。とっくの昔に川向こうへ渡ったはずだが彼奴の付けたちっちゃな傷は鎖骨下にまだかろうじて残っている。
 競走馬上がりの彼は去勢後も負けん気の塊で、馬術部のガキどもの大半を見下していた。腕の立つ先輩方には渋々ながらも従うが、周囲をちょろちょろし寝藁を替えボロを拾い裏を掘ってブラシをかけたっぷりの水と飼いを朝昼晩夜と差し上げる我々一年坊主は大半が一年目で脱落するお世話係でしかないのだから当然だろう。
 普通の馬と違ってハーディは片目が三白眼とまではいかないが普段から白目の部分が見えた。癇性の馬によく見られる特徴だそうだ。学生の手に負える程度とはいえうちの厩舎では一番気が荒いから気をつけろと言われていた。
 そんな畜生でもというか畜生らしいというか、おいしいものがあればちょっぴり譲歩してくれる。春はクローバーやたんぽぽで大きく作った花輪、夏は大鎌を振るって刈り集めた青草、秋は牧草地のふちの刈り残しを落穂拾いよろしく集めてきては貢いだ。まあそんなもので懐柔されるような玉ではないし舐められまくって最終的にがぶりとやられたわけだが、馬房の中で早くおやつを寄越せと前掻きしていたハーディがむわりと薫る青草の山を食んでいるときは白目も見えなくなって、ただの美しい生き物になった。
 馬の幸せが何かは知らぬ、だがあの瞬間だけは何の憂いも無かったことを願っている。

7/29/2024, 5:35:01 PM

 たとえ嵐が来ようとも。
 聞き覚えのあるフレーズだ、あれは確か支店長のご子息のお下がりでひと山頂いたというソノシート(雑誌付録などのペラい廉価版レコード、シングルCDに相当するようなやつ)を父がカセットテープにダビングして私にくれたアニソンの中のひとつ……多分ボルテスVのエンディング曲あたりじゃないか?
 本編は一度も観たことがない、でも曲は知っている、そんな特撮やアニメがたくさんある。
 学校で習ったことの大半は細部があやふやになりつつあるのに、6歳からおよそ3年と7ヶ月聴き続けたダビング音源の記憶はテープをどこかに失くした今もするすると辿ることができる。
 あれらは確かに私という人格の基礎のひとつになった、それを思うと私は自分の子供らにどれだけ多彩な材料を手渡してやれたろうか、もっといろんな、私の知らない素晴らしいものを見せて聴かせてやれたはずではなかったかと後悔し、同時に「そんなものばかり聴いて」とたまに困った顔をしながらも決して止めはしなかった母に感謝と尊敬の念を新たにするのである。