たとえ嵐が来ようとも。
聞き覚えのあるフレーズだ、あれは確か支店長のご子息のお下がりでひと山頂いたというソノシート(雑誌付録などのペラい廉価版レコード、シングルCDに相当するようなやつ)を父がカセットテープにダビングして私にくれたアニソンの中のひとつ……多分ボルテスVのエンディング曲あたりじゃないか?
本編は一度も観たことがない、でも曲は知っている、そんな特撮やアニメがたくさんある。
学校で習ったことの大半は細部があやふやになりつつあるのに、6歳からおよそ3年と7ヶ月聴き続けたダビング音源の記憶はテープをどこかに失くした今もするすると辿ることができる。
あれらは確かに私という人格の基礎のひとつになった、それを思うと私は自分の子供らにどれだけ多彩な材料を手渡してやれたろうか、もっといろんな、私の知らない素晴らしいものを見せて聴かせてやれたはずではなかったかと後悔し、同時に「そんなものばかり聴いて」とたまに困った顔をしながらも決して止めはしなかった母に感謝と尊敬の念を新たにするのである。
7/29/2024, 5:35:01 PM