【高校で有名なヤンキーと出会ってしまってから（4）】
ー
あのあと途中の道で別れ、今日のことを夜思い悩んでいた。相変わらず、自分の言動には後悔しかない。俺は結局、なりたい自分を探している。ほんとはこんな自分に嫌気がさして「ヤンキー」として悪目立ちしているだけ。実際に昔はグレていたけど。そんな黒歴史をなかったことにして、新しい人生を生きようと頑張ったつもりだった。
「はぁ。」
心の中を表現したようなため息が出る。結局何がしたいんだろう。まぁ、何か分かるかもしれない。このまま続けておこう。
ー
時間の流れは早いものだ。もうお昼なのか。いつも通り、屋上のドアを開けて飛び出す。
「やぁやぁ、お嬢…ちゃん？」
（ピンクが2人？おっと？増えてるぞ？昨日までは1人だったはず。おかしいな。俺の目が腐っているのかもしれない。）
「あ、先輩。こんにちはです。」
「こんにちはです。さとりん。この人。ナンパものなんじゃない？」
「あのー、聞こえてまっせ。」
その子はロングヘアでさとりと同じくピンク髪だった。
「君は？」
「うちは

【傘の中の秘密】
ー
僕の学校には、高嶺の花と呼ばれる成績優秀で人を差別することなく容姿も素晴らしいような人がいるらしい。最近知った噂であるがそのような人がいるなら一度見てみたいものだ。そう思いながらも学校に向かう。今日は進級によるクラス替え。それぞれが、自分の進路に向かって学力に励む分岐点。僕は特に欲もなかったので、自分の得意科目がある方を選択した。クラス替えの表を見てとりあえずそのクラスに入り、自席に目を向ける。理想とは真逆で、僕の席はドアに近いところであった。まぁ、言うまでもない。僕の名前は赤崎海だから。時間が経ち、ある程度人が集まったとき、今年の担任らしき人物が姿を現す。この待機時間はとても長く感じていたがその苦痛もやっと解放されると喜びをあらわにした。とりあえず先生の話を聞き、隣の人と交流を深め、高校生特有のグループ作りが行われた。
ー
なぜ人は群がるのか。意味がわからない。友好関係だなんてバカバカしい。一人のほうが楽なのに、無駄に気まずいだなんて感情を出さずに済むのに。今年も1人かぁ。まぁ、別にいいけど。今年もそのようなスタンスでいいだろう。一人で行動したほうが効率がいいし、気軽である。今日の授業も業務事のような言葉しか発してないし、内職の時間は爽快だった。
ー
そのような日々を行っている中、今日は膨大な雨が降るとのニュースが流れていた。最近梅雨だし、そりゃ降るやろ。内心ため息をついて傘を手に取る。玄関のドアノブに手をかけ家を飛び出す。全く、いつからチキンレースをやってるのやら。でも、遅刻は一度もしたことないし大丈夫でしょ。今日も今日とて、いつもの日々を行う。

【高校で有名なヤンキーに出会ってしまってから…（３）】
ー
今は放課後。チンピラどもの陰口を影で聞いてそのまま帰ろうかと思っていたところ、いつもの先輩が対峙してくれた？この表現で合っているだろうか。まぁ、そんなことなんてまたどうでもいい。現状況を説明すると、なぜか先輩に連れられスタバに来ている。マジでなんで？その理由は心の中を読めばすぐ分かってしまうと思ったが、この人、連行中の思考が自問自答を何回も繰り返すような感じだった。全く理解できない。表では明るく話しているのに、同時でそのような思考ができるのはすごい。すごいんだけど…。内容が内容で…。
『（やべぇ、あんなダサいセリフ嬢ちゃんに聞かれてしまってたんやけど!?いや、大丈夫だ。嬢ちゃんは多分気にしてない。勢いで「スタバ行こ！」と言ったものの、異性に誘ったこと始めてだし、どんなことしたらいいか。後の俺に任せる。嬢ちゃんは何が好きなんだろうか。それは後で聞こうか。話題は残す。手札はたくさんある方がいいからな。嬢ちゃんからの俺の印象は何か。ヤンキー。どうやったらヤンキー噂消えるんだ？黒歴史化するだろ(T_T)）』
いろいろと考え好きでは？と思う。オレンジの空を眺め、2つの声を聴きながら退屈しない道を過ごした。
ー
スタバにて。今日は平日だと言うのに席は人で満たされている。
（こりぁ〜たまげた。人多すぎやろ。これはあれだな。）
「嬢ちゃんよ。持ち帰りでいいか？」
「はい。構いませんよ。というか、ここで『お嬢ちゃん』呼びは、周りから変な視線が…」
「んじゃぁ、『さとり』で。」
「へ？」
隣にいる先輩が私の方をまっすぐ見てそう言う。思わず素っ頓狂な声が出る。
（え？なんか悪いことしたか？さとりの表情固まってるが）
「さ〜と〜り〜。大丈夫か？顔赤いぞ？」
私の顔を覗き見る。
「い、いえ。大丈夫です。⁄⁠(⁠⁄⁠ ⁠⁄⁠•⁠⁄⁠-⁠⁄⁠•⁠⁄⁠ ⁠⁄⁠)⁠⁄」
「なら、いいけど。」
その何気ない顔で名前を呼ばれ、顔が近かずいただけで私は数秒フリーズしてしまった。今も思考が鈍っている。あの目から送られた情報が脳にこびりついてはがれない。
「さとり〜、注文なにする？」
「あ、え。えっと…イチゴフラペチーノで」
「んじゃ、僕は抹茶フラペチーノで」
気づかなかった。そんなにも頭が…。
「あら。あなたたち。もしかしてカップル？」
その定員は、ニヤニヤしながらこちらを見てくる。
「いえ、僕らは友達です。まぁ、カップルになるかはまだわかんないですけど」
「え？」
（あ、いらんこと言ったわ。やっちまった。やべぇ。嬢ちゃんの顔が見れんのやけど）
その含みのある言葉を修飾するが如く、心の声が私の頭に聞こえる。微妙だ。推測しても推測してもわからない。この人はバカなんだろうか。
「そう(●´ω｀●)。なんかお似合いだから、トッピング増やしてあげる」
「あ、ありがとうございます」
先輩達が何か言っている。その言葉は私の耳には入ってこなかった。しかし、その定員からは温かな言葉が届いていた。
ー
ひとまず、注文したものを各々持ち、外へ出た。今は私が家まで送られている状況である。先輩が口を開く。
「嬢ちゃんは放課後の学校の件、僕が来なかったらどう対処とした？」
先輩がずっと気になっていたことを聞かれた。
「そうですね。特に何もしようとしませんでしたよ」
「お、おぅ、そうか…」
「でも、あそこで先輩が来るとは思ってませんでした。言葉はダサかったけど、それだけで私は少し安心出来ましたよ。突然『スタバ行こ』って言ったのも、私のためだったんですよね。先輩は優しいですね〜」
そう言いながら、横にいる先輩の腕に指ドリルをする。先輩の表情は夕焼けの輝きによって、さらに色を濃くしていた。可愛い。そう思ったのは無意識だった。
（あぁ～、恥ずいなぁ。なんて反応すればいいんだよ。あのセリフを訂正してぇ…）
目線を私から少し逸らしている先輩は、予想外の返答に思考を巡らす。
「これはあの時のお返しですよ」
いつの仕返しなんだ？って言わんばかりの先輩の顔と頭に、私は満面の笑みを見せた。
ーcontinue

【校内で有名なヤンキーに出会ってしまってから…（2）】
ー
「よぉっす！嬢ちゃん。今日も来てるね〜。」
月日は流れ、私は毎昼学校の屋上で食事をするようになっていた。ここに来ればへんてこりんな先輩がいて退屈しないし、教室よりはましだと思うようになった。
「今日はパンじゃないんですね。」
「いやぁ～、そうなんよ。売店で買いに行ったら人多くて、並んでいざ選ぼうとしたらパンなくって、仕方なく…」
と言いながら、手元のおにぎりを掲げる。
「いつもそっちのほうがいいんじゃないですか？体力も空腹もパンよりも満たされるし。」
「フッフッフ、嬢ちゃんよ。(●´ω｀●)👍️」
「反論しないんですね」
（事実。返事のしようがない）
「確かにパンよりも米のほうがいいけど、俺はパンがいい！」
「わがままですか…」
（まぁ、理想はパンに色の綺麗な弁当持ってきて食べたいがなぁ）
そんな先輩の願望が聞こえる。私はすこし思考して、
「先輩、食べますか？」
箸に卵焼きを挟み、先輩にみせる。
「え？」
「私毎日朝作ってるんですよ」
（つまり、嬢ちゃんの料理を食べるということか…。ちょい待ち。嬢ちゃんが…年上の男子に…。これは、恋人同士が行う温か～いシチュエーション。それに、嬢ちゃんは今自分が使った箸で持ち上げている。それを手で取るのは行儀が悪い。断るか？いや、でも嬢ちゃんの善意やし、ん？というか間接キスじゃ？…）
先輩の感情が物質で言う気体のように熱運動を行っている。そして、表情は面白く、少し赤く私から視線をそらし長期思考をしている。www。急かしたらどうなるんだろう？
「先輩、早くしてくださいよ。」
（お嬢ちゃん、まさか、無意識か？有意識だったら相当勇気あるな。僕なんてチキンだから。でもどうしようか…………。アァもぅ）
「ありがたく、いただきます。」
その顔は真っ赤になっており、顔を少し下に倒して目を左右に動かしていた。私は箸を先輩の口にゆっくり持っていき、先輩が自ら口にいれるのを待った。つくづく、私の性格はある意味良すぎると思う。いや、性格というよりは能力の使い方かな。
（これは、俺が顔を動かさないと行けないんだよな？しかも地味に嬢ちゃんの顔と近くなるし…恥ず）
先輩は勇気を出して、それを食べた。
（普通に美味しい。うん美味しい…）
「どうでした？」
私は結果がわかった上で聞く。
「むっちゃ美味しかった…です。はい⁄⁠(⁠⁄⁠ ⁠⁄⁠•⁠⁄⁠-⁠⁄⁠•⁠⁄⁠ ⁠⁄⁠)⁠⁄」
「それは良かったです。」
この人はホントにヤンキーって噂される人なのか、疑問にしか思わなかった。
ー
今は放課後、部活に入っている人は皆この時間にそれぞれのことをしているのだろう。しかし、私はそのようなことに時間をつぶすことは無駄だと考えている。先輩は部活入ってるのかな？まぁ、部活に入るとしたら…。考えている最中だった。角を曲がろうとするとき、廊下の先で他人の声から、私の話が聞こえる。
「古明地のやつ、顔がいいからってあんな調子乗って。本当うざいんだよね。普段口動かさないくせに顔で物言うし、休み時間は本しか読んでない。なんなん？」
「でもあの人孤立してるし、ほっとけばいいんじゃない？別に顔がいいのは元々なんだし、変えられない事実じゃん。」
「いやいや。あの容姿だから、裏で男子に持ててんの。それがウザイの。」
「そ、そう。」
「だからさ、私たちで陥れない？」
「え、なんで？」
「え？うざいからだよ。それだけ。なに？協力してくれないの？だったら、あんたが古明地の代わりになるけど、それでいいの？」
「わ、分かったよ…」
めんどくさくなりそうだ。かかわりたくない。でも、抜け出せそうにないな。やられたときに、証拠でも集めて倒すのもあり、か。重たい体を切り返して裏から回ろうとした刹那、聞き慣れた声が聞こえる。
「お前ら。俺の獲物に手出す気か?」
どすの利いた声が廊下に響く。
「あんた誰？」
「はっ、この学校で俺を知らないとは。いいよ、教えてやるよ。俺は佐々木海星。この学校ではヤンキーとして有名だな。」
「周りからそう言われてるだけで、どうせ実際は陰キャの雑魚なんだろ？」
「いや？まぁ、おとなしい時はそんなもんだけど、俺の邪魔をするんなら、この俺が排除するまでだけどな。来い」
その叫びとともに、先輩の後ろに筋肉質な先輩が2人やってきた。」
「ひ、」
そいつは、走って逃げていった。
「君は、何かあったら言ってな。俺等じゃないかもしれないけど助けてくれるから。」
「は、はい。ありがとうございます」もう1人はゆっくり、でも緊張しながら歩いていった。
「ありがと、お二人さん。ごめんね、こんなことで呼んじゃって。」
「いえいえ、いいんですよ兄貴。」
「そうですよ。我々はアニキのおかげで変われたので。」
「そうか。じゃぁ、今日はとりあえず解散。」
「御意！」
子分はそそくさに去っていった。先輩はその場でじっとしている。
（この感覚、嬢ちゃんがおるか？まぁ、俺の感なんやけど）
「底にいるんだろ？」
「は、はい。」
私は角から身を出した。先輩はハトが豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
（マジでおったんやけど！？）
「せ、先輩。助けてくれてありがとうございました。」
数秒経ったあと先輩の口は動く。
「お、おう。そうか。」
（どうする俺。この先どう動くか。俺、あの時変なこと言ったし。嬢ちゃんにきかれてたんしょ？はず。セリフがセリフなんだよなぁ。てか、嬢ちゃん大丈夫かな？アイツラの話、精神的に来てたら…）
「なぁ、嬢ちゃん。今からスタバ行くか？」
「へ？」
突然過ぎて私も一瞬脳死をした。
ーcontinue

【実力主義の世界でなぞの青い狐】
あぁ…。また救えなかった。膝の上に眠っている男の子をみて、また絶望する。この世はやはり残酷だ。強い者は豪華な家に、ご飯に、権力に…。弱い人は、そんなのも…。この世界に吐き気さえ覚える。僕は、何も変われてない。善意の甘えはかえって弱い。そのゆるさが死を招く。弱いままでいいなんて言えない。つらいなら誰かに助けてもらえばなんてこともだめだ。生きるために必死になれ！現実ではそう言わないと…
ー
この国には能力というものが存在する。人間を超えた力。いわゆる超能力。人間はこの力を使ってあらゆるものを作り出し、世を変えてきた。そのため、人間は優越をつけ始め、強者と弱者の格差も大きく広まっていった。政府は強者に沿い、金や権限を与え、守らせる。その結果、強者は政府の味方で、手厚い支援を受け、不自由のない生活を過ごせる。だが、弱者は放置され、差別され、粗末に扱われる。こんな世界だ。ゴミだろ？でも、これが現実。もちろん、不満を持つ者だっている。だから反社は今もなお、増え続けてる。それに対抗するため、政府は能力学校を作り上げた。それぞれが持つ能力を育て上げる学園。僕はこの学園の生徒になって世界を変えようと思った。
ー
入学基準は「能力を持っている」のみ。誰でも入れる。しかし、この学園はほぼ強者が集う。怖いね。僕の実力が通用するのかどうか。まぁいい、そんなことなんて。僕は自分の教室を見つけ、中に入る。しーん、と静かな空気が流れる。そうして周りをよ～く見てみると、ある少女が視界に映る。奏。僕が見た中で一番強い能力者。しかし、僕は話しかけずに自席に座った。その後すぐに先生がやってきた。
「おはようございます。では、今からクラス分けをするので戦闘上に集まれ。要件はそれだけだ。じゃぁな」
先生はそれだけを言って教室を出た。クラス内がざわつく。さて、僕も行くとするか。
ーcontinue