ある日のこと。
「っ、触らないで!」
僕の手はペシッと振り払われてしまった。
僕、何かしたっけ。
「ごめん。そんなつもりじゃ」
「わかってるよ…けど、これ以上優しくしないで!」
とりあえず謝った。
が、その言葉を遮るように少女は言った。
少女は絶望に満ちた顔でこちらを見る。
今までどれだけ傷付いて来たのだろうか。
僕には、わからない。
「ごめん。」
僕は少女に向かって言った。
「僕には、その感情が解らないんだ。」
その言葉を聞くと、彼女はどこかへ走り去ってしまった。
僕にはどうしていいか解らず、ただ彼女の背中を見つめることしか出来なかった。
ある日のこと。
「っ、触らないで!」
つい、言ってしまった。気づくと私は彼の手を振り払っていた。
「ごめん。そんなつもりじゃ…」
「わかってるよ…けど、これ以上優しくしないで!」
彼は無表情で謝ったのに、何故かそこに悲しさと優しさを感じた。
黙って彼を見ていると、彼は口を開いた。
「ごめん。」
私が、え?と言いかける前に彼は言った。
「僕には、その感情がわからないんだ。」
そんなこと、とっくに知っている。
そう。知っていたはずなのに。
私は彼の前から走り去った。
泣きながら。
私は、どうして。
また、彼の優しさを求めてしまったのだろうか。
いや、違う。
今まで私は、自分の理想と彼を重ねていたんだ。
彼に感情がないのをいい事に。
ほんっと最低だ。私。
私はたんぽぽ。
今、風に乗って
あなたの真上を飛んでいるの。
なんちゃって。
私はただの幽霊。
風の影響は受けないけれど
たんぽぽみたいに風に乗って
ゆらゆら飛ばされたい気分なの。
刹那。
そんな言葉を聞いて
私はアニメの言葉を思い出した。
「たとえあなたが写実体でも、私にとってはあなたが
オリジナルだったんだよ。」
一言一句あっているかと聞かれると
あっていない所もあると思うけど
何故か印象に残っている言葉。
誰かのために生きられたのなら。
俺はこんな愚者にはならなかった。
誰かのために生きられたのなら。
こんな言い訳にすがらなくても良かった。
誰かのために生きられたのなら?
…どっちにしろ俺は変わらないかもな。
孤独と不安に苛まれ、日々の延長線で
生きているだけの死んでいるのと同じ様な日々。
生きる意味なんて、考える余裕も無かった。
気付けば俺は酒と女に溺れ最低なクズ人間になっていた。
そして最期には急性アルコール中毒で死んだ。
35歳。あまりにもはやい死だったが、両親は悲しまなかった。
そりゃそうだ。あんなクズだったんだから。
俺は死んでからようやく目が覚めた。
自分の行動を反省し、神様に自分を地獄行きにする様に頼んだ。
しかし、返ってきたのは意外な返事だった。
俺は酒と女に溺れたが人に暴力は振るわなかったので地獄行きにする理由が無い、と言う。
でも俺は天国に行ける様な事はしていない、と伝えると、神様は一瞬困った様な表情をしたが、何かをパッと思いついたのか俺に1つ、提案をした。
俺に次の人生を与える、と。
そして次の人生では、俺の運命の人も用意してくれるらしい。
さらに、次の人生で徳を積めば天国へ行けると。
…待て待て、流石に良すぎないか!?
何か企んでいるのか?と神様の方を見るが、何も企んでいる様子は無い。
お人好しすぎるだろ、と半ば呆れたが、神様に用意してもらった人生なんだ。
何が起こっても頑張るか。
神様が俺の決心がついたのを見て、行ってらっしゃい、と手をふった。
俺が手を振り返すと急に辺りが真っ白になり、眩しくて目を瞑った。
気づくとベッドの上で寝転んでおり、体が中学生くらいの身長になっていた。
どうやら赤ちゃんからではないらしい。
ここから俺の人生が始まった。
この男性は、運命の人とも出会い、生きる意味を見つけ、結婚して幸せに暮らします。
でも、この後の物語は別のお話。
またの機会にでも語りましょう。
この人は未来で十分徳を積むので天国行きですね。
世の中に本当の善は無い。
善のフリをした偽善者ばかり。
結局は自己満足。
自分もそう。
優しいフリをして他人を傷つける。
善と悪は正反対に見えて、
実は紙一重だったりする。