ある日のこと。
「っ、触らないで!」
僕の手はペシッと振り払われてしまった。
僕、何かしたっけ。
「ごめん。そんなつもりじゃ」
「わかってるよ…けど、これ以上優しくしないで!」
とりあえず謝った。
が、その言葉を遮るように少女は言った。
少女は絶望に満ちた顔でこちらを見る。
今までどれだけ傷付いて来たのだろうか。
僕には、わからない。
「ごめん。」
僕は少女に向かって言った。
「僕には、その感情が解らないんだ。」
その言葉を聞くと、彼女はどこかへ走り去ってしまった。
僕にはどうしていいか解らず、ただ彼女の背中を見つめることしか出来なかった。
ある日のこと。
「っ、触らないで!」
つい、言ってしまった。気づくと私は彼の手を振り払っていた。
「ごめん。そんなつもりじゃ…」
「わかってるよ…けど、これ以上優しくしないで!」
彼は無表情で謝ったのに、何故かそこに悲しさと優しさを感じた。
黙って彼を見ていると、彼は口を開いた。
「ごめん。」
私が、え?と言いかける前に彼は言った。
「僕には、その感情がわからないんだ。」
そんなこと、とっくに知っている。
そう。知っていたはずなのに。
私は彼の前から走り去った。
泣きながら。
私は、どうして。
また、彼の優しさを求めてしまったのだろうか。
いや、違う。
今まで私は、自分の理想と彼を重ねていたんだ。
彼に感情がないのをいい事に。
ほんっと最低だ。私。
5/2/2024, 10:48:58 PM