開けないLINE(制作ちう)
【なぜ開けないのか?】
感情的に(見るのが怖い、腹が立つ)
自分のものではないから(浮気の疑い、落とし物、家族など)
LINEの問題(故障、パグ、暗証番号忘れ、)
香水
春香の使ってる香水って
[ドーリーガール]ってやつ?
うん、そうだけど、なんで?
こないだ、ドンキで俺も
なんか新しいのにしようかなって
色々試してみてて
なんか、似てんなーって
そっか。見つけられたんだ。
ワンちゃんみたいな嗅覚だね。
うん、でもなんかちょっと違う気がして。
いちお聞いてみた。
ふふ。
あ、そういえば来週は空いてるの?
違和感がないように話を変えた。
あまり深掘りされたくなかったし
2度とこの話を掘り下げられたくなかった。
かつての恋人がくれた
[AffectIonアフェクション]という香りは
驚くほど私に合う香りだった。
愛情、愛着を意味するAffectIonは
彼からの想いなのか
愛着から執着へ変わってしまった
私への揶揄なのか。
今や確認するすべもない。
初めて香りを纏った時
「思ったとおり」とだけ宗二は言った。
最高の褒め言葉で
口説き文句だった。
前に行きたがってたとこ
香水作るところはいいの?
うん、いいや、それより
映画見たいのあって。
フランス映画だけど付き合ってくれる?
寝たらごめんww
なら朝イチ先に見てくるから
昼過ぎに合流する?
フランス映画が好き。
あまりにも文化が違うから。
情愛や性愛が、感情でなく
雰囲気で描かれている。
セリフも詩的な表現が多く
口数も少ない。
空気のような映画が多いと
私は思っている。
宗二はそういう人だった。
そしていつの間にか
いなくなってしまった。
答えも出さず
香りだけを残して。
1人映画を見る。
昔ながらのミニシアターは
誰かの丁寧な仕事の上で
清潔な湿り気を感じる。
人の匂いが染み込んだソファは
真紅のベルベット生地に
金の刺繍があしらわれている。
座面を撫でると
生地が逆立ち、指の跡ができる。
昔だったら
願掛けのように
名前を書いていただろう。
あなたを忘れない。
映画をみると没入した分だけ
自分の中に豊かさが生まれる。
「冷めたランチみたいな人」
と主人公が言っていた。
心の中でメモをする。
氷が溶けて
薄くなったレモンティー
爽やかさも苦味も
全部薄まっている。
んで、どうだったの?
今日の映画。
とても良かったよ。
ざっくりいうと
都会暮らしの女性が田舎に引越して
田舎の男性と結ばれそうで結ばれない話。
それが、とても良かったの?
うん。
現実そう簡単に恋愛にはならないし
かといっていい年頃の男女が意識しないわけもない。
とっても良かった。
ふーん、好きよな、そういう
曖昧なやつ。
喉に詰まりそうな
冷えたオムライスを
フォークで食べる。
ゆらゆらゆらゆら。
おっきいあながあいてるよ。
おちないように
そーっとみるの。
そこにね、まいがいたの。
かがみみたいに
おかおがきれいにみえるよ。
つんつん、ゆらゆら
つんつん、ゆらゆら。
ママはおよげないと
だめだよってゆうの。
いつかゴジラがきて
うみがどーっときたら
およげないとだめだよって。
でもね、まいは
ゴジラとおともだちになるから
だいじょうぶ。
おなかがすいてるから
ごはんくださいって
おきたゴジラに
あめをあげるの。
いちごあじと、メロンのあじ
どっちがすきかな。
まいはいちごがいいから
メロンのあげよう。
はっぱさんがおちて
おみずがゆらゆらした。
まいのおかおがぐにゃってして
にこにこしたり
へんなおかおになったりした
じーってみてたら
じーってみてた。
あっぷっぷ!したら
あっぷっぷした。
あっかんべーしたら
べんべろべーってなった。
はっぱがゆらゆらしてた。
ありさんがおみずをのみにきた。
じーっとみてたら
みみずさんがおぼれてた。
ままにおしえてあげよう。
まい、もうクロールおよげるから
みみずさんにはならないよって。
ママがまいをよんでる。
はやくママのところに
いかなくちゃ
ママ、まいは、ここだよ。
【むかいあわせ】
鏡に映る自分との自問自答
そう言う話を過去に書いたことがある。
だけどそれとは違うものにしたかった。
初めは水たまりにうつる美しい景色に
感動する子供を描きたかった。
なんでこうなったシリーズかもしれない。
海へ 🪼
創作ちぅ
一般論における平均
つまり「ふつう」という言葉が
彼女は嫌いだった。
何でもかんでも裏返しにしてしまう
ざっくばらんというか無神経な人に
なぜ焦がれてしまったんだろう。
サラダはシーザー派とチョレギ派。
パスタはボロネーゼと和風ペペロン。
炊き込みご飯は好きと嫌い。
社会人になって「飯食お」と
誘われてからも食でさえ
何一つ合うところはなかった。
唯一、一緒だったのが高校、委員会。
そのくらいしか接点がなかったのに
それだけで親友になった。
好き、になった。
同じ制服に袖を通して
2年目の冬に
2人のリボンを交換した。
それは所有の証とかじゃなくて
単純に彼女が赤が好きで
私が青が好きだった、というだけだった。
はじめて会った時から
今まで、彼女の印象は変わっていない。
美化委員会には適当な気持ちで入った。
なんとなく楽そうで
なんとなく内申点がもらいやすそうな
そんな委員会だった。
1番後ろの席に座り
担当教諭が来るまでの間
机の上に堂々と出したスマホで
オセロをやっていた。
先日、押入れの掃除をして以来
うちの家族みんなしてハマっている。
今日こそは、生意気な弟を倒す、と
誓ってAIと戦っていた時。
「渋、今オセロかよ」
風鈴のなるような耳心地の良い声で
ネットの民みたいな
クサしたセリフが聞こえてきた。
「あ、はい、すいません」
青いリボンの色を見るに
一学年上の先輩だ。
名札は……していない。
「謝るようなことじゃねぇけど」
「……。」
空いていた前の席の椅子を
勢いよく引き、後ろ向きに座る。
背もたれに肘を置き頬杖をついて
「やらせて」と口を尖らせた。
どうぞ、とスマホを渡そうとすると
「それじゃあお前、サワ…ムラ?ができねぇじゃん」
と、ひとつ笑った。
強引だけど、笑顔がとても素敵な人だと思った。
自分のゲームを放り出し、ホーム画面へ戻る。
プレイヤーの設定を[2人]に替えて
先行を譲った方がいいのだろうかと考えていると
「黒がいい、クロセだから」
「はい、じゃ、先行ドゾ」
「オシ、ヤンぞ後輩」
美化委員会の担当教諭が
クラスの補習と委員会を同日に
ブッキングしたという理由で
こちらの顔合わせは
「生徒の自主性に任せる」
という伝言を残すまで
いや、残した後も2ゲーム
合計で3ゲーム、私のボロ勝ち
という結果になった。
「クロセ先輩、あの…すいません」
「謝んなよ!腹立つー!なんで負けんだよ!」
「……フフ」
「笑った罰な、も1ゲーム、勝った方が今日の勝ちな!」
「いいですよ」負ける気が
これっぽっちもなかったから
軽口を叩いた。
まさか、4ゲーム目にして
先輩に大敗するとは思ってもいなかった。
「ザマミロ」と目を細くして
いーっと歯を見せてきた先輩は
自分のことを[オセロ女王]と呼べと命令してきた。
「そんなにダサい名前でいいんですか?」
「女王かっこいいだろうが!」
「仰せのままに」
「うむ、よきにはからえ」
初めてこんな気持ちになった。
第一志望校に落ちて滑り止めの
女子高で無難に過ごそうと思っていた。
適当にやり過ごせばいいと、思っていた。
気づいた時には
「次いつ会えますか?」と聞いていた。
自分でも変な聞き方をしたと思った。
「次の委員会じゃね?」と先輩は言った。
そしてサッと立ち上がると「じゃなぁ」
と言って教室を出て行った。
反芻するまでもなく
自分の中で気持ちが動いていることが
わかった。くすぐったかった。
夕暮れも陽が伸びた、そうは言っても
もう暮れ切ってしまう。
他の人が座ったまま
元に戻さなかった椅子を
一つずつ戻して回って驚いた。
クロセ先輩は椅子を綺麗に戻していたのだ。
なんだこれ、ギャップ…可愛いかよぉ。
突然、後ろから、声。
「やっぱさ!オセロやりたい時、呼ぶわ」
「!!びっくりしたぁ……!!」
「あはは!ごめんて!おつかれぇ!!」
わたしは
謝る時に、笑わない。
たった1回の奇跡の勝ちに
[女王]というあだ名をつけない。
初対面の後輩に話しかけないし
ましてやオセロを4ゲームもやらない。
普通じゃないこと
それが彼女らしさ。
女王は教えてくれた。
黒と白、表裏一体のオセロの駒は
誰よりも近い距離に
背中合わせの彼女がいるということ。