moooosha

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6/3/2024, 11:32:39 AM

【失恋】という言葉を本当の意味で
理解していない。
失恋をするためにはまず
恋をしなければならないからだ。

俺は
生まれながらにして
人を愛することや
自身を愛するということに
執着がない。

初めてそれに気がついたのは
小学校3年生の秋だった。



バレンタインも
クリスマスも
関係のない季節に
隣のクラスのゆかちゃんが
ぼくを好きだと言ってくれた。

ぼくはゆかちゃんが
何を言っているかは
理解できたが

とうてい
その気持ちを受け取ることも
返すこともできなかった。
形のない心のようなものを
ぼくは怖いとさえ思った。


中学高校と進み僕はいまだに
恋を知らない。


大学社会人を迎えてもなお
俺は愛を知らない。


青年壮年を乗り越えてもなお
私は  知らない。



そうして私は間も無く

たましいだけになる。


それでもなお


こいを


あいを


しらない

5/28/2024, 11:04:59 PM

あの夏を忘れない。

初任給を握りしめて帰った。
そうはいっても高校生の短期バイト。
今思えば、たった42,000円。

本当は家族で何かしたかった。
「久々にみんなでメシでも」
そういえたらよかった。
でもいえなかった。


ぎこちない言葉を紡ぐより
確かなものを残したくて
中古で買ったカメラに
現像代も考えずに金をつぎ込んだ。
だからNikon F4で撮り溜めた
どうしようもない俺の日常は
すぐに色を失った。


最後の半袖になる頃
お袋は家を出て行った。
大人たちの事情なんて
知り得ない。

【理解はしたけど納得はできない】

小6の弟は
俺よりも言語化がうまい。


俺は親父の代わりに
親父は弟の代わりになった。


正気のまま狂っていく
乳臭い大人をみて
弟は「お母さんはどこ」なんて
もちろん言わなかった。


失ったものへの執着は
こんなにも鮮やかなのに
あの夏の、母さんの笑顔は
カビ臭いカメラの中に
閉じ込められたまま。


【半袖】

5/25/2024, 3:41:31 PM

書く習慣
本日のお題
【降り止まない雨】



___________________



体温を 奪ってしまえ
ことごとく
のっぺらぼうに
降り止まぬ雨


___________________



体温が表すのは生きる感情。
喜怒哀楽のそのすべてを
失ってしまえ。
すでに表情筋は死んでいる
さぁ、雨よ
容赦なく打ちつけて
痛ましい私を晒してしまえ。


感情が昂ると
ゼロになってしまうんです。
思考も止まる。
何がしたいのかも
どうしたらいいのかも
わからなくなる。
そんな時に、誰かに、何かに
リセットしてほしいという
【すがり】だと思う。

5/24/2024, 9:42:25 AM

のがれ
られない

5/22/2024, 12:20:06 AM

なぜこんなことになっているかわからないけれど、順を追って頭を整理すると。惰眠を貪っていた午前を取り戻そうと、
コーポエリーゼから歩いて40秒。何を頼むか考える間もなくつくこの距離に、[喫茶 純]は、ある。

少し重たい扉を開けると、ドアベルが耳に心地いい。店内はオープンキッチンが開放的な印象で、それを取り囲むようにいくつかの大きな切り出しのテーブルがある。
入口右手の出窓も、カウンターテーブルのようになっており、2つの丸椅子が少し手狭そうだが居心地の良さそうな雰囲気がある。

そこに見慣れた丸い背中がある。
コーポエリーゼの管理人さんだ。
ここでは何度か会うが今日は手を振っている。おいで、おいでと呼んでいるようだ。


「どうも、よければご一緒しませんか」


「あ、いつもお世話になってます、お邪魔しますね」


普段だったら少し億劫に思うが、心なしかウキウキしているように見えて、ご機嫌の理由を聞いたほうがいい気がした。


「何かいいことでもあったのですか?」


「ふふ、今日は好きな曲が流れるのです」


聞くと、その曲とやらは[3と8がつく日に必ず流れる]らしい。

店内のBGMはストリーミングで店主のお気に入りを、店主のルーティーンに合わせて、テーマやジャンルなどが日替わりに決まっている、そうだ。いわゆる、音楽の日替わりランチのようなイメージ。


「あ、この曲です、聞いてみてください」


と年甲斐にもなく人差し指を立てて口元へ可愛く添える。なんだろう、この仕草、おじさんがやると少し面白い。曲に集中しようと目を閉じる。






「不思議な疾走感と爽やかさがある曲ですね」


私が言うと、管理人さんは今度は得意げな顔をした。


「牧野さん、実はかねてよりお話ししたいことがあったのです」


管理人さんの話によると、私の住む201号室の上の階にはある作詞家が住んでいるそうだ。それはいわゆる[ゴーストライター]をしている人で、世の中から身を隠して過ごしているらしい。そして、例の[3と8がつく日に必ず流れる曲]の作詞をしている人物であるそうだ。


「ここからは了承のお話になりますが」


先程口元に運んだ人差し指を再び立てて、自身の顔の前にピッと突き出した。この人のこれは、癖なんだな?……続きの説明を聞こう。

なぜこんなことを話すかというと単純で、生活音に加えて
昼夜逆転して過ごしているので迷惑が……ということらしい。なんと律儀なゴーストライター、と初めは笑ってしまった。管理人さんも同じことを思ったらしいが、どうにも本人からの意向だそうだ。


[喫茶 純]で聴いた[3と8がつく日に必ず流れる曲]しかり、夜に宿る人とは?コーポエリーゼに出没する[幽霊]に会ってみたいものだ。


透明🫥というテーマでしたが、後ほど書き直します。

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