【花束】
「今日のテーマ、花束か…」
書くことを諦めた時、柔らかい香りをたずさえて、大きな花束を持った女性が電車に乗ってきた。
紫を基調とした花束。
彼女に似合う、と思った。
大事そうに胸に抱えて、香っては噛み締め、目元を緩める。
紫のバラ、チューリップ、カラー、スターチス。気品、不滅の愛、夢見る美しさ、永遠に変わらない心、送った相手がどんな人なのか分かるようなロマンチックさ……【検索】が捗った。
幸せ、なのだろうな。
そう思う。
人の幸せをこんなふうに目の当たりにしたのが久々で、なんだかとても寂しくなった。
そろそろわたしの降りる駅、とても素敵だから写真を撮らせてなんて言う勇気はなかったけど、願わくば明日も彼女が、花瓶に手を添えて花を愛でてくれていたら。そう願ってしまう。
ちなみに…同じ駅で降りた別の女性も、小ぶりなブーケを持っていた。
書けってことね?わかったよ、エールは受け取った。
「うるせぇ。ババァ」
反抗期を迎えた娘は自室の扉を強く閉めた。貝になりたい、そういう時期はわたしにも覚えがある。だけど、母さんのおっちょこ10選くらい聞いてくれたっていいじゃない。
「笑えないって」
この度おっちょこ100選で、うっかり寿命を迎えました。老衰です。頑張ったけど、こればっかりはね、そんなに泣かないで。あなたを抱きしめようとしても、もうかなわないのだから。全ては必然。わたし次はあなたの子供として生まれてみたいわ。来世でもよろしくね。
【スマイル】
【編集中】
だって間に合いそうにないから
実は わたし
宮崎駿の 脳に
寄生している
蟲です。
そういう幻想なので
他では書けません。
その必要もないのです。
【時計の針】
23回も会っているのに私は
彼を覚えていない、らしい。
短期型の記憶脳だからこそ
いつも新鮮な気持ちでいるけれど
嫌なことなんてすぐに
ポイっと手放してケロっとできる
そんなおひさまみたいな自分が大好きだけれど。
「今日はこれで23回目です」
すれ違う時にぶつかった肩に
「ごめんなさい」と言った時
彼はニコッと笑ってそう言った。
どこか懐かしい気がしたけれど
今日1日で23回も会えたなら
明日は、もっと仲良くなれるかもしれない。
次に会えたら、彼と写真を撮ろう。
せめて顔だけでも覚えていられるように。
あれカメラどこにやったかな?
確かここの引き出しに……
あ!ラッキー宝くじみっけ!
当たってるか見てみよう……
あれ、私、なにをしたかったんだっけ?
まあいっか!
もうすぐ新しい自分になれる。
また1日が始まるわ⭐︎
【後記という名の言い訳】
短針ちゃんは記憶が定着しずらいので
覚えていられません。
0時を過ぎるとその日の記憶も
なくなってしまいます。
長針くんはきっと何度も何度も
巡る中で彼女の性質を知り、
どうしたら覚えてもらえるか
毎分毎分、四六時中
考えているのだと思います。
【溢れる気持ち】
私の自覚する愛着障害というのはとても厄介で、それこそとても説明がしづらいものである。
境界線を超えて自分のテリトリーにしてしまったものに関しては、悲しく虚しい依存をする。
それがないと呼吸ができない、わけじゃないとわかっていても自分の生命線のように離れられなくなってしまう。
手にとってから、手にしたことに気づくこともある。
ああ、また大切なものが増えてしまった。
自分でできる意識としては
「自分が思っているほど自分は必要とされていない」
「お前の代わりはいくらでもいる」
そういう所謂、言われたらきついことを自分で抑制剤のように言い聞かせる事だけだ。そうすることで過度な執着を切り離すことができる。
周りから見たら最後の最後で自信がない人、言葉の重みがない人に見えているかもしれない。
自分の耳に優しい言葉を学ぶために自己表現を始めたところもある。
だってこれは自己満足の上で自分を開示して「意外と考えているじゃん」と言ってもらえる可能性を秘めているからだ。
ここでも期待をしてしまう浅ましい人間である。
理解してもらうつもりはない、君はきっと同じ重さの想いが通じたと思っているかもしれないが、違う。
まるで、違う。
天秤が水平になるように、100:100に見えるように振舞っている。本当の姿は天秤の天板、その台座にぼたぼたとヘドロのような沼ができている。
身勝手な期待と打算的な演出が天秤の足場から水平を奪っている。これが溢れる気持ちなのであれば、誰に見せられる物でもない。
花村萬月は言った「お前のゲロだったら、きれいに舐めてやるよ」そんなバカ、どこにいるのだろうか。そう言いつつまた期待している。執着とは、未練とは、厄介なものである。