終点のない列車に乗り込んで、ただ揺られていた。
切符は早々に回収された。
乗務員がいうには「リサイクルの為です」と。命はまわす必要があって、終点がないのもその為だという。
外の景色はよく移り変わった。
眠気に身を任せるたびに。ゆえに目を覚ますたび、別世界へと入り込む。
カラフルな気球が晴空に浮かんでいた。かと思えば雪枝の山中を走っている。かと思えば金銀、小魚の群れが泳ぎ去り。かと思えば……
終わりなく眠ってしまう。
不思議とからだの疲れはなくて、もうどれだけの駅を過ぎたのか、はたまた停まっていたのか定かでない。
心地良く。
仮に今「降りてください」といわれても動けそうにない。
乗務員が巡回にきた。手帳のようなものを開き、切符を見せろという。
切符はもう渡した。
降りる予定の駅はない。
このように伝えると、相手は頁を捲りながら無言でしばらく立っていた。そうして何度目かの景色が過ぎた。
「リサイクルの為です」頁を捲り終えた乗務員がいうには。
「いちど本来の姿に戻し、さいど命をうみ落とす為の」
流されてゆく景色と眠気。噛みころす欠伸。
相手は繰り返す。
「再生の為です」
言い直すように強く。
まぶしさに車内が染まるなか、白、黄、赤などの光をみた。
サイセイのためです。
また言い直すように。
それは「再生」というよりも、別のなにか、響きとしては終着が始発に変わる瞬間に近いなにかを感じさせる。
【夢を見てたい】
眠れないね 雀たちが挨拶しだして
起きあがれないね 床には
ただひとりの生き物がいて
冷たくなった 脚とこめかみ、酷い頭痛
身を包むものが無いから
抱えこむものも、無いから
冷たくなってただひとり
ころがってる 生きたまま
ただひとつ、冷えたことばが
ころがってる 顔のすぐ横
着込んでも寒風 通り抜けたように
床で縮こまった体 串刺しにされた
まるで解凍の時を待っている
生き物、ことば
冷気に浸され 目を瞑り
一回、
二回 くしゃみした
【寒さが身に染みて】
古い会話履歴は削除した。
見返さない写真は削除した。
今に不必要なら棄ててきた。
約束される度、無責任に同調した。
寝付く度、穏やかな最期を想像した。
微かな期待は気のせいにした。
もとから居なかったんだよ。
それでも世界は変わらず回っていたんだよ。
ああ
でも、
長く生き過ぎた。
この日がくるまでに本当は、
本当はね、
……。
本当は絶望していたかった。
戻れなくなる度、幼さだけ引きずられて人生が進むんだ。
【20歳】
くろわっさんさくさく
ほしをちりばめて
とけたまーがりん
かんぺきなすがた
みあげたよるは
ほそぼそくとげり
かげるさかさくろわっさん
くろっさわんさか
かたちをかえる
こんがりばたー
ちでちをあらう
どこからのぼり
どこへしずんだ
くろくさんかくろわっさん
みかづきだけで
おかおをえがくと
なんだかぶきみねくろわっさん
【三日月】
縦横に広いテーブルがあって。
正方形の紙や、布の切れ端、糸やボタン、花びら、
結晶、砂、星、葉っぱ、
そういったものが多彩に散らばっているとするでしょ。
好きなように織ってみて。
まずは素材を選んで、次に色やかたちを選んで、
だけどもし、テーブルのうえのそれらが境界もなく混ざりあって、川のように流れ出したら?
手触りもかたちも消え去って、最後にあなたは色を探す?
――何だって、選べるほうが深みが増すかも。違いがあったほうが面白いかもしれない。交じり合うことは混ざり合うよりも健全で、理想的で在りたいとも。
そしていま目の前に、にじんだ色々が流れている。
あなたはスポイトを手に取る?
染料にするため?
抽出した一滴がなみだのように無色透明だったとしても?
【色とりどり】