透明
「ねぇ、私思ったんだけど」
なんだいな、友梨奈
「私って、中身が無い気がするのよ」
何を言っているのかわからんな〜
「ちゃんと聞いてよ!ame!」
はいはい…
「私さ、普通すぎる気がするから」
そうかなぁ?ワタシと喋ってる時点でおかしいって思うけど
「だって…」
“透明”なんでしょ?
「…分かってるなら、最初から言って」
そんなおこんないでよーん!
でも…透明も案外良いかもよ?
「は?何が」
例えば…雨が止んだ後、虹が出たら。
雨に反射するだろ?
「うん」
それって、綺麗じゃんか
「…それだけ?」
それだけ。
じゃあ、上がるよ
「うん」
雨上がり、虹に反射した水溜りの君は、虹に照らされ綺麗だったよ、ame。
終わり、また始まる、
「無い…」
合格発表の日、私は番号の紙を持ちながらあぜんとした。
私の番号がなかった。
あんなに必死に勉強したのに…
「ねぇ千代子!私、受かってたああ!!」
え…
「私遊んでたのに」
馬鹿にしているようにしか聞こえなかった。
「そうなんだね、良かった」
私は、受かっていなかった悲しみを、ぶつけることなんてできないし。
「ねえ、千代子は?」
うるさいよ…受かって無いんだから
「どしたの?返事してよー!」
うるさい…
うるさいうるさい!
「黙ってよ!私は受からなかったの!」
ハッ、っと気づいたときには遅かった。
梨花は、悪くないよ。
確かに、ちょっとイラってくる事も言うけど…
受からなかったのは私のせいだ。
でももう…言ってしまった。
「ご、ごめ…んなさッ」
言葉が詰まって出てこない。
「落ち着いてよ、千代子」
「梨花…ごめん、ごめんなさい!」
「大丈夫だよ…今、終わったとしても、また、始めればいいんだから。」
梨花…そうだよね。
諦めなければ、道はある!
そうして私は、帰り道を勇気を出して歩き始めた。
星
「綺麗だね〜」
「そうだね」
今日、私は友達と星を見に来た。
「あれがオリオン座で、あれがおとめ座!」
指差しながら友達は笑っていた。
「そうなんだね」
私は別に星に興味はないけれど、友達と来れたことが嬉しかった。
「ねぇ、あれは?あの星は?」
そう言っても返事はない。
当たり前だ。
彼女は、14年前に私の前から居なくなってしまったんだから。
「綺麗だね…」
ねぇ…ねぇ、
「返事、してよ…」
返事するかのように、キラキラと星が輝いた。
君は、そこにいるの?
星はチカチカする。けど、“あの子”からの返信はない。
私の目からは、大粒の涙が溢れた。
まるで、空で輝く星のように。
願いが一つ叶うならば
「短冊になにかこうかなー!」
「健康になれますよーに」
「金がほすい」
私は、自分の事は書かない。
「今年」も。
短冊に触れたボールペンを、スケートのように滑らせる。
書くことはあの日を境に、毎回同じだから。
「短冊、書けた?」
え?
「ふふ、有彩っぽいね〜!」
ぽたぽた、涙が短冊に落ちる。
「美香…」
願いが一つ叶うならば、私は…
私は、またもう一度、美香に会いたい…
秘密の場所
「じゃあ、行ってきます」
「夜には帰ってくるのよ」
「うん」
やっと出られた。
オレは家には居たくない。なんだか窮屈だし、オレには合って無い気がする。
オレはどうすればいいんだろう。
秘密基地でも作る?いや…小学生じゃあないんだし
そうしてぶらぶら歩いていたら、オレは家の前にいた。
秘密基地なんて作らなくても、ここはもう秘密の場所みたいなもんだったのかも知れない。
母さんが作る肉じゃが、父さんと見る野球、その一つ一つがオレの家族だけが知ってる事だから。
「ただいま、オレの秘密基地」