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3/13/2025, 12:50:36 PM

透明

「ねぇ、私思ったんだけど」

なんだいな、友梨奈

「私って、中身が無い気がするのよ」

何を言っているのかわからんな〜

「ちゃんと聞いてよ!ame!」

はいはい…

「私さ、普通すぎる気がするから」

そうかなぁ?ワタシと喋ってる時点でおかしいって思うけど

「だって…」

“透明”なんでしょ?

「…分かってるなら、最初から言って」

そんなおこんないでよーん!
でも…透明も案外良いかもよ?

「は?何が」

例えば…雨が止んだ後、虹が出たら。
雨に反射するだろ?

「うん」

それって、綺麗じゃんか

「…それだけ?」

それだけ。
じゃあ、上がるよ

「うん」

雨上がり、虹に反射した水溜りの君は、虹に照らされ綺麗だったよ、ame。

3/12/2025, 12:15:18 PM

終わり、また始まる、

「無い…」
合格発表の日、私は番号の紙を持ちながらあぜんとした。

私の番号がなかった。
あんなに必死に勉強したのに…

「ねぇ千代子!私、受かってたああ!!」
え…
「私遊んでたのに」
馬鹿にしているようにしか聞こえなかった。
「そうなんだね、良かった」
私は、受かっていなかった悲しみを、ぶつけることなんてできないし。
「ねえ、千代子は?」
うるさいよ…受かって無いんだから
「どしたの?返事してよー!」
うるさい…
うるさいうるさい!
「黙ってよ!私は受からなかったの!」
ハッ、っと気づいたときには遅かった。
梨花は、悪くないよ。
確かに、ちょっとイラってくる事も言うけど…
受からなかったのは私のせいだ。
でももう…言ってしまった。
「ご、ごめ…んなさッ」
言葉が詰まって出てこない。
「落ち着いてよ、千代子」
「梨花…ごめん、ごめんなさい!」
「大丈夫だよ…今、終わったとしても、また、始めればいいんだから。」
梨花…そうだよね。
諦めなければ、道はある!

そうして私は、帰り道を勇気を出して歩き始めた。

3/11/2025, 12:00:39 PM



「綺麗だね〜」
「そうだね」
今日、私は友達と星を見に来た。
「あれがオリオン座で、あれがおとめ座!」
指差しながら友達は笑っていた。
「そうなんだね」
私は別に星に興味はないけれど、友達と来れたことが嬉しかった。

「ねぇ、あれは?あの星は?」

そう言っても返事はない。

当たり前だ。
彼女は、14年前に私の前から居なくなってしまったんだから。

「綺麗だね…」

ねぇ…ねぇ、

「返事、してよ…」

返事するかのように、キラキラと星が輝いた。

君は、そこにいるの?

星はチカチカする。けど、“あの子”からの返信はない。

私の目からは、大粒の涙が溢れた。
まるで、空で輝く星のように。

3/10/2025, 11:36:34 AM

願いが一つ叶うならば

「短冊になにかこうかなー!」
「健康になれますよーに」
「金がほすい」

私は、自分の事は書かない。
「今年」も。

短冊に触れたボールペンを、スケートのように滑らせる。
書くことはあの日を境に、毎回同じだから。

「短冊、書けた?」

え?

「ふふ、有彩っぽいね〜!」

ぽたぽた、涙が短冊に落ちる。

「美香…」

願いが一つ叶うならば、私は…

私は、またもう一度、美香に会いたい…

3/8/2025, 1:26:58 PM

秘密の場所

「じゃあ、行ってきます」
「夜には帰ってくるのよ」
「うん」

やっと出られた。
オレは家には居たくない。なんだか窮屈だし、オレには合って無い気がする。

オレはどうすればいいんだろう。

秘密基地でも作る?いや…小学生じゃあないんだし

そうしてぶらぶら歩いていたら、オレは家の前にいた。
秘密基地なんて作らなくても、ここはもう秘密の場所みたいなもんだったのかも知れない。
母さんが作る肉じゃが、父さんと見る野球、その一つ一つがオレの家族だけが知ってる事だから。
「ただいま、オレの秘密基地」

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