バグ

Open App
11/14/2022, 1:14:13 AM

「また会いましょう」

見えないものが見える事を人に言ってはいけないと、物分りのいい俺はなんとなく気がついていた。

でもあいつらは、俺が見えることをわかっていて、俺に構ってもらおうと寄ってくる。

ただ、この神社にいる時だけは平気で。静かで。

何か、忘れている気がする。

手を引いてくれた、朧気な記憶。

誰だっけ。

11/9/2022, 1:22:26 AM

「意味が無いこと」

朝は身支度、昼は仕事、夕方は肉を食べる。夜は本を眺めて...。

これを何日繰り返しただろう。

冷たい布、錆びたナイフ、読めない字。

意味を求めちゃいけないことはわかってる。だけど継続は心地がいい。

うんともすんとも言わないラジオのスイッチを押して、中途半端な掛け布団を被って寝転がる。

動物の毛をつめると暖かいらしいから、食べた動物の羽や毛を色々入れてみてるけど...まだ全然足りないらしい。

生きてる、今呼吸がある、体温があって、自分で時間を感じられる。

僕自身に意味は無くてもいい。

10/26/2022, 12:06:34 PM

「愛言葉」

君が望むから、僕は君への愛の言葉を吐く。

僕の本音なんて1つものっていない言葉は、僕にとっては空っぽで、君にとっては喜びで。

付き合ってもいない僕らは今日も、そんなやりとりをして。

君とずっと居たいけど、君と愛を囁きたくない。

君のわがままを聞くたびに僕は嘘をついて、君の喜ぶ偽りを重ねて。

それがどんなに残酷か、君はきっといずれとても傷つくんだろうな。

10/25/2022, 2:42:03 PM

「友達」

どうせ何を言っても僕の言葉なんて虚言だ。
僕は僕の視点でしかものを言わないんだから。

だから君だって僕から見れば虚言だ。

僕の言葉なんて何も信じなくていい。

君の言葉も信じない。

このくらいじゃないと僕は息が出来ないんだ。

僕は君が、僕を傷つけると信じて止まないんだから。

10/22/2022, 7:38:33 AM

「声が枯れるまで」

別人のように憎しみに満ちた目をした君を見て、僕は動揺した。

君の手が握りしめてくしゃくしゃになった楽譜と、掻きむしられて赤い爪痕だらけの首。

掠れた息で必死に何かを伝えながら、君がこちらに歩いてくる。

うん、うん、歌いたかったね、でも歌えなかったんだね。

僕の傍に来て崩れ落ちた君の泣き声は、やっぱりひとつも音にならなくて。

声を枯らすことも叶わない、君の努力は行き先を失った。

Next