バグ

Open App

「声が枯れるまで」

別人のように憎しみに満ちた目をした君を見て、僕は動揺した。

君の手が握りしめてくしゃくしゃになった楽譜と、掻きむしられて赤い爪痕だらけの首。

掠れた息で必死に何かを伝えながら、君がこちらに歩いてくる。

うん、うん、歌いたかったね、でも歌えなかったんだね。

僕の傍に来て崩れ落ちた君の泣き声は、やっぱりひとつも音にならなくて。

声を枯らすことも叶わない、君の努力は行き先を失った。

10/22/2022, 7:38:33 AM