2025/07/23(水)『True Love』
「True Love、本当の愛 なんてこの世界にいくらでも溢れかえってる」
君ははにかんで当然のように言う
俺の悩みを馬鹿にしているのか。
せっかく信頼して相談したというのに。
君は続けて言う――…
「母を想う人がいる。
家族のことを想ってひたむきに働く人がいる。
辛くても心配させまいと笑う人がいる。
遠くで苦しむ誰かを救いたいと思う人がいる。
何気ない会話で笑える友がいる。
ここには本当の愛がないのか?
この世界はきっといくつもの小さな本当の愛の上に成り立っている…。僕たちは自然の中で生かされている…。だから今が苦しくてもこの世界の愛を信じて生きろ」
「――…ふっ、ははっ(笑)お前そんなこと言うキャラだったっけ?(笑)つか、規模デカすぎな?
…いやっ〜、でも…ありがと、、なんか気分楽になったわ。世界の愛ねぇ…」
気づけば君の顔は赤くなっている。
酒のせいかいつも言わないセリフを言った羞恥心からかは分からない
本当に酒はこいつを狂わせる
何気ない会話で笑える友を目の前にして、本当の愛、True Love を感じる
俺の悩みが小さく感じてしまう。いや、実際に小さいのかもしれない。
ネガティブは考え方によってはチャンスにもなる。これもこいつが酒の席で言っていたことだ。
こいつのことはやっぱり信頼しても良いだろう
いつもここに本当の愛があると信じられるから
2025/07/14(月)『夏』
昔あった駄菓子屋さんは無くなっていた
代わりにそこにはコンビニがあった
気温が35度を越えた暑い日に実家に帰った
数年ぶりの実家は変わらない
なのに町並みは跡形もないほどに変わっていた
友達と遊びに行った公園の敷地は減り、新しい家が建っている
その公園で響いていた子供の笑い声などもうない
公園なのに「静かに!」という看板ができている
暑い日差しと涼しい風に包まれたあの坂道は…
彼女に告白した神社は…
あの頃の彼女と笑い合った土手は…
おばあちゃんが買ってくれたアイスの味は…
夏休みうるさかった蝉の声は…
気づくと次々に思い出が巡ってゆく
何気ない日々だったはずの一つ一つの出来事は
意外にも覚えているものだ
あの日々は僕にとって宝物であったに違いない
キラキラしていて、値段なんて決められない
でもその時は宝物だなんて気づけない
今日も一面青い空に入道雲が目立っている
夏の暑苦しくて清々しい匂いがする
変わったのは街の風景なのか
僕の感性なのか
いつの間に変わってしまったのだろうか
2025/6/25(水)『空はこんなにも』
「私だけ頑張って期待して利用されて…
バカみたい」
呟いたその言葉は空気に溶けていく
他責思考が頭を巡る。
それと同時にこんな自分が悪いって自分に被害者ぶんなって…、矛盾してる
誰かに本音を言おうとするたびに自然と涙が出てきて苦しくなる。
でも人前で泣きたくなんてない。
だから私は涙を流さないために上を見上げる
空はこんなにも広い
きっと世界のどこかには同じように空を見ている人がいる
綺麗と呟く人
星の観察をしている人
面白い形の雲の写真を撮る人
雨にうんざりする人
希望を見いだそうとする人
誰かに救いを求める人
私はどこの誰かもわからない人を想像して心が
晴れていく
空は人と人の心を静かにつなげる
私もどこかの誰かの心の支えになれるように…
2025.6.16(月)『記憶の地図』
記憶の地図なんか当てにしちゃいけないな…
一人の青年が目の前の鬱蒼としげった木々と湖を見ながら呟いた。
青年が向かっていたのはもちろんこんな場所ではない。昔行ったことがあるからとスマホのナビを頼ることはしなかったのだ。その結果、目の前には小さな湖と木々が広がっているだけで目的地であった神社はどこにもない。
しかし、これは不幸中の幸いと呼べるだろう。
その湖は見事なものであった。
綺麗に映し出された木々
太陽の反射の煌めき
かすかに聴こえる波打つ音
生物の憩いの場
小鳥たちのメロディー
周りに咲き乱れる花々
きっと普通に生きていれば見つけることもなかったし、この素晴らしい自然に出会うこともなかっただろう。
記憶の地図は、新たな発見への地図に変わった
「こういうのも悪くない。またいつか記憶の地図で旅をしよう」
青年の声は自然が奏でるメロディーの中に消えた
2025.6.14(土)『もしも君が』
君はいつも困ったように笑う
僕はいつも元気に君と話す
でも分かってもらえないことが多い
僕はいつも君を抱きしめる
君が辛くて泣いてる時はいつもそばにいる
いつも一緒!
でもね、最近君は元気がないんだ
なんでかな…?
僕が歩けなくなっちゃったから?
君より早くおじいちゃんになっちゃったから?
いつも迷惑かけてたから?
ご飯がいつもより食べれないから?
僕とお散歩にいけないことが増えたから?
もしも君が僕と同じ姿ならもっと慰めてあげられるのかな…?
もしも僕が君みたいに人間だったら君ともっと一緒にいられたのかな…?
でもね、僕はもう君とはいれないみたいだから、僕を幸せにしてくれた君のことを後何十年か天国で待ってるね。
僕は君の可愛い家族だから!