2025/9/2(火)『夏の忘れ物を探しに』
昔、おばあちゃんが言ってた
9月は夏の忘れ物を持ち去ってくれる月だって
暑さを増して感じさせるほどの蝉の鳴き声を
鈴虫は塗り替えるように高い音を出す
緑に満ちていた葉っぱは少しづつ色を変えて
オレンジになり世界を赤く染め上げる
賑わっていた海から人がだんだんいなくなる
お祭りの賑わいが少なくなる
だから9月は世界の移り変わりを1番楽しめる良い月らしい
だから9月をしっかり感じて過ごしなさいって
でも…今は9月って夏の延長みたい。
熱いままだし移り変わりの期間だってあやふやだ
なら…今、夏の忘れ物を探して持ち去ってくれるのはどの月なのだろう…。
2025/8/13(水)『真夏の記憶』
※暗め・重め
※苦手な人は読まないことをおすすめします
―――*―――*―――*―――*―――*
降り止むことのない雨が傘を突き抜けるような音を立てて打ちつける。
いつもは五月蝿いほど鳴いている蝉が今日は異様なまでに静かにしている。
ただジリジリと息のできないほど蒸し暑い。
―XXXX年、異常気象なんてザラにある
「昔は40度いけばひどく暑かった」
そんな言葉をよく聞く。
今の気温に比べればまだ断然良いだろうに
今日は、外は大気が非常に汚くて熱波で息が出来ないから外に出るなということらしい。
どうりで誰もいないわけだ…
今更思い出した情報に納得する
いや、思い出したというより…だから外に出たという方が正しいのだろう。
確かに視界もかなり悪い
1mも先を見れば霞がかり、遠くは完全に見えない
マスク代わりにしていた布を外す
急に息が吸えなくなる
確かに息が出来ない
息をしようとするたびに
ヒュッ…と喉から音が鳴る
視界が暗くなっていく
それでも歩く
家から―人から―…
なるべく遠くに――…逃げるように
この荒廃した世界では真面目に生きてる奴が馬鹿を見る。
いつの時代もきっとそうだったに違いない。
真面目に働いてる奴より仕事押し付けて媚び売ってる奴が出世する。
頭が良くても社会では役に立たない。
まぁ、大体のことはAIによって作られたAIで解決出来てしまうのだから賢い人間など必要ない。
馬鹿な振りをして笑っても虚しいだけ。
ならば…だから…
この世界に希望を持てないから外に出る
あぁ、先に進めば進むほど意識が薄れていく
見えなかった遠くが見えてくる
―――……きっと皆同じなのだろう
苦しんで倒れゆく者が沢山いるではないか
―荒廃した世界にお似合いの風景だ
これが最後の真夏の記憶になるのだろう
あぁ、こんな世界に生まれてしまった自分にお似合いの最期に出来た…―
この真夏の記憶に―…「 」
2025/07/23(水)『True Love』
「True Love、本当の愛 なんてこの世界にいくらでも溢れかえってる」
君ははにかんで当然のように言う
俺の悩みを馬鹿にしているのか。
せっかく信頼して相談したというのに。
君は続けて言う――…
「母を想う人がいる。
家族のことを想ってひたむきに働く人がいる。
辛くても心配させまいと笑う人がいる。
遠くで苦しむ誰かを救いたいと思う人がいる。
何気ない会話で笑える友がいる。
ここには本当の愛がないのか?
この世界はきっといくつもの小さな本当の愛の上に成り立っている…。僕たちは自然の中で生かされている…。だから今が苦しくてもこの世界の愛を信じて生きろ」
「――…ふっ、ははっ(笑)お前そんなこと言うキャラだったっけ?(笑)つか、規模デカすぎな?
…いやっ〜、でも…ありがと、、なんか気分楽になったわ。世界の愛ねぇ…」
気づけば君の顔は赤くなっている。
酒のせいかいつも言わないセリフを言った羞恥心からかは分からない
本当に酒はこいつを狂わせる
何気ない会話で笑える友を目の前にして、本当の愛、True Love を感じる
俺の悩みが小さく感じてしまう。いや、実際に小さいのかもしれない。
ネガティブは考え方によってはチャンスにもなる。これもこいつが酒の席で言っていたことだ。
こいつのことはやっぱり信頼しても良いだろう
いつもここに本当の愛があると信じられるから
2025/07/14(月)『夏』
昔あった駄菓子屋さんは無くなっていた
代わりにそこにはコンビニがあった
気温が35度を越えた暑い日に実家に帰った
数年ぶりの実家は変わらない
なのに町並みは跡形もないほどに変わっていた
友達と遊びに行った公園の敷地は減り、新しい家が建っている
その公園で響いていた子供の笑い声などもうない
公園なのに「静かに!」という看板ができている
暑い日差しと涼しい風に包まれたあの坂道は…
彼女に告白した神社は…
あの頃の彼女と笑い合った土手は…
おばあちゃんが買ってくれたアイスの味は…
夏休みうるさかった蝉の声は…
気づくと次々に思い出が巡ってゆく
何気ない日々だったはずの一つ一つの出来事は
意外にも覚えているものだ
あの日々は僕にとって宝物であったに違いない
キラキラしていて、値段なんて決められない
でもその時は宝物だなんて気づけない
今日も一面青い空に入道雲が目立っている
夏の暑苦しくて清々しい匂いがする
変わったのは街の風景なのか
僕の感性なのか
いつの間に変わってしまったのだろうか
2025/6/25(水)『空はこんなにも』
「私だけ頑張って期待して利用されて…
バカみたい」
呟いたその言葉は空気に溶けていく
他責思考が頭を巡る。
それと同時にこんな自分が悪いって自分に被害者ぶんなって…、矛盾してる
誰かに本音を言おうとするたびに自然と涙が出てきて苦しくなる。
でも人前で泣きたくなんてない。
だから私は涙を流さないために上を見上げる
空はこんなにも広い
きっと世界のどこかには同じように空を見ている人がいる
綺麗と呟く人
星の観察をしている人
面白い形の雲の写真を撮る人
雨にうんざりする人
希望を見いだそうとする人
誰かに救いを求める人
私はどこの誰かもわからない人を想像して心が
晴れていく
空は人と人の心を静かにつなげる
私もどこかの誰かの心の支えになれるように…