2025/8/13(水)『真夏の記憶』
※暗め・重め
※苦手な人は読まないことをおすすめします
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降り止むことのない雨が傘を突き抜けるような音を立てて打ちつける。
いつもは五月蝿いほど鳴いている蝉が今日は異様なまでに静かにしている。
ただジリジリと息のできないほど蒸し暑い。
―XXXX年、異常気象なんてザラにある
「昔は40度いけばひどく暑かった」
そんな言葉をよく聞く。
今の気温に比べればまだ断然良いだろうに
今日は、外は大気が非常に汚くて熱波で息が出来ないから外に出るなということらしい。
どうりで誰もいないわけだ…
今更思い出した情報に納得する
いや、思い出したというより…だから外に出たという方が正しいのだろう。
確かに視界もかなり悪い
1mも先を見れば霞がかり、遠くは完全に見えない
マスク代わりにしていた布を外す
急に息が吸えなくなる
確かに息が出来ない
息をしようとするたびに
ヒュッ…と喉から音が鳴る
視界が暗くなっていく
それでも歩く
家から―人から―…
なるべく遠くに――…逃げるように
この荒廃した世界では真面目に生きてる奴が馬鹿を見る。
いつの時代もきっとそうだったに違いない。
真面目に働いてる奴より仕事押し付けて媚び売ってる奴が出世する。
頭が良くても社会では役に立たない。
まぁ、大体のことはAIによって作られたAIで解決出来てしまうのだから賢い人間など必要ない。
馬鹿な振りをして笑っても虚しいだけ。
ならば…だから…
この世界に希望を持てないから外に出る
あぁ、先に進めば進むほど意識が薄れていく
見えなかった遠くが見えてくる
―――……きっと皆同じなのだろう
苦しんで倒れゆく者が沢山いるではないか
―荒廃した世界にお似合いの風景だ
これが最後の真夏の記憶になるのだろう
あぁ、こんな世界に生まれてしまった自分にお似合いの最期に出来た…―
この真夏の記憶に―…「 」
8/12/2025, 8:43:55 PM