白米おこめ

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2/10/2025, 11:32:25 AM

ああ、溢れてしまう。零してしまう。
私のような星屑には多すぎたのです。
持ちきれなかったのです。地上の人々の願いは。
私の小さな身体では、到底支えきれませんでした。

ああそれでも、手いっぱい持ちましょう。
知らない誰かの願いを叶えるために、
拾える限りの全てを持って。

ああ、熱い、熱い、耐えきれない、耐えきれない。
私にはやはり無理だったのです。
知らない誰かよ、ごめんなさい。
私には無理だったのです。

ああ、溶ける、とける__



「星に願って」 白米おこめ

2/5/2025, 9:47:38 AM

行きつけの、小さな花屋がある。
帰り道からはちょっと外れた、隠れた場所に。
いつも同じ人が甲斐甲斐しく水やりをしているので、
きっと一人で切り盛りしているんだろうな、と思う。
俺は、無理に話しかけてくる訳でもなく、ゆっくりと
考える時間をくれるこの人の雰囲気が好ましかった。

趣味の生け花のために、
季節の花をいくつか買って帰るのが月末のルーティーンで。
もう一つこの花屋の良いところを挙げるとするならば、
花束を一つ買うと、おまけとしてそれとは別に
新しい花を彼女が一輪選んで、包んでくれることだろう。

最初に買った時は、ネリネ。
ある日は、「似合うと思いまして、」なんて月下美人を。
誕生月には、調べたであろう誕生花を渡してくれて。

今日の俺の手元には、「新入りです」なんて言われた
ミモザが揺れている。

家に帰った後も、ルーティーンは続いている。
貰った一輪を丁寧に取り出して、麻紐で縛って吊るす。
彼女が選んだ花が枯れてしまうのがどうにも惜しくて、
なんとか調べて辿り着いた、ドライフラワーのやり方。
初めて会った時の花からずっと貯めていて、
きゅっとリボンで縛れば、彼女が創る花束のようで。

ミモザが枯れない花になったら、
いつか、ドライフラワーの花束を、彼女に。

「永遠の花束」 白米おこめ

1/30/2025, 11:32:45 AM

教えてって、言えたらいいのに。
食べ物とか飲み物とか動物とか…君の好きなもの、何でも。
色々知っているような、知らないような気がするから。

俺の知ってる君は、いつだって予測の範疇で。
少し離れたところで、時々隣で、
ちょっと見えただけの好みのかけら。

自販機で買ってるのは、あまい炭酸が多くて。
コンビニだと、ツナマヨのおにぎりをよく選ぶ。
猫が好きだけど猫アレルギーなんだと、しょんぼりして。

やっぱり、知っているようで知らないと思う。
だから俺に教えて。


『まだ知らない君』 白米おこめ

1/29/2025, 1:58:38 PM

日陰ぼっこをしよう。
太陽の光は、僕達には眩しすぎるから。
灰になってしまうだなんて冗談を言い合いながら、
太陽から隠れるように小さな樹の下に集まろう。

木陰で寄り添って、内緒話をしよう。
眩しさに目を細めると、
君の表情がわからなくなってしまうから。
ペットボトルの水で喉を潤しながら、
こっそり持って来たタオルで汗を拭こう。

束の間の休息。二人だけの時間。
一本しかない木の幹に、もたれるフリをして寄り添おう。
小さな葉の影にすっぽり埋もれるように体育座りをして。

グラウンドで揺らぐ陽炎を、今だけは遠いものとして。
そっと、日陰で並んで眺めていよう。

「日陰」 白米おこめ

1/14/2025, 1:08:07 PM

カサって音。
持ってるだけで崩してしまいそうな音。

君の綺麗な箸遣いが見たい。

焼けた私の匂いを、
変な香りだと思いながら

その手でそっと掴んで

崩してしまえ。

「そっと」 白米おこめ

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