行きつけの、小さな花屋がある。
帰り道からはちょっと外れた、隠れた場所に。
いつも同じ人が甲斐甲斐しく水やりをしているので、
きっと一人で切り盛りしているんだろうな、と思う。
俺は、無理に話しかけてくる訳でもなく、ゆっくりと
考える時間をくれるこの人の雰囲気が好ましかった。
趣味の生け花のために、
季節の花をいくつか買って帰るのが月末のルーティーンで。
もう一つこの花屋の良いところを挙げるとするならば、
花束を一つ買うと、おまけとしてそれとは別に
新しい花を彼女が一輪選んで、包んでくれることだろう。
最初に買った時は、ネリネ。
ある日は、「似合うと思いまして、」なんて月下美人を。
誕生月には、調べたであろう誕生花を渡してくれて。
今日の俺の手元には、「新入りです」なんて言われた
ミモザが揺れている。
家に帰った後も、ルーティーンは続いている。
貰った一輪を丁寧に取り出して、麻紐で縛って吊るす。
彼女が選んだ花が枯れてしまうのがどうにも惜しくて、
なんとか調べて辿り着いた、ドライフラワーのやり方。
初めて会った時の花からずっと貯めていて、
きゅっとリボンで縛れば、彼女が創る花束のようで。
ミモザが枯れない花になったら、
いつか、ドライフラワーの花束を、彼女に。
「永遠の花束」 白米おこめ
2/5/2025, 9:47:38 AM