8/3/2023, 3:45:57 PM
目が覚めるまでに
彼が私を振って私の友人と付き合い始めた。
友人は特別美人というわけではないけれど、色白で楚々とした佇まいの魅力的な女性だ。細やかな気遣いができて、頭の回転が早いから一緒にいて楽しい。彼が何かの拍子にうっかり惚れてしまったのも仕方がないと思う。
唯一彼女に欠点があるとすれば、それは彼女の恋人は彼を含めて七人もいるということだろう。
「なんていうか、ゲーム感覚? 別に誰のことも好きじゃないよ。私、男の人嫌いなの」
たしかに相手を同じ人間だと思っていたらできない所業だ。何も知らずに舞い上がっている彼は少々不憫だけれど、私はにやにや笑いを抑えきれない。
いつか目が覚めるときまで、せいぜい幸せな夢でも見ていろよ。
8/2/2023, 3:53:08 PM
病室
夜中にふと目を覚ますと、ベッドの横に母の姿があった。四年前に他界した母だ。
母は私の顔を見下ろして、微笑みを浮かべている。
これは夢か幻、幽霊か。無意識に手を伸ばすと、母がその手を優しく握った。触れられる。不自然なほどリアルな皮膚の感触。違和感を覚えて手を引っ込めようとすると、思いのほか強い力で引っ張り返された。私は母に導かれるまま、ベッドから下りて病室の扉をすり抜けた。おかしいな、病室の扉は閉まっていたのに。私はこれからどこへ連れて行かれるのだろう。