病室
夜中にふと目を覚ますと、ベッドの横に母の姿があった。四年前に他界した母だ。
母は私の顔を見下ろして、微笑みを浮かべている。
これは夢か幻、幽霊か。無意識に手を伸ばすと、母がその手を優しく握った。触れられる。不自然なほどリアルな皮膚の感触。違和感を覚えて手を引っ込めようとすると、思いのほか強い力で引っ張り返された。私は母に導かれるまま、ベッドから下りて病室の扉をすり抜けた。おかしいな、病室の扉は閉まっていたのに。私はこれからどこへ連れて行かれるのだろう。
8/2/2023, 3:53:08 PM