#記録と記憶
記憶と記録は、似て非なるものだ。記録は時間と共に残るもの、確かな形で後に伝わる。
しかし、記憶は人の心の中に宿り、歪み、曖昧に変わる。
記録がどんなに正確でも、それを受け取る人々の記憶は常にその時々の感情や視点に左右される。
記録は事実を保存し、記憶は個々の体験を形作る。
記録に残る言葉の数よりいまだ心に残る記憶の深さは底知れずそこにある。
お題: 記録
#いざ南の国へ
春の初め、ツバメは故郷を離れ、南の地へ向かう旅を始めた。
風を受けて羽ばたくたび、広がる大空と新たな世界への期待が胸を膨らませた。
途中、激しい嵐に遭い、空が暗くなることもあったが、ツバメは決して恐れず、風の中で力強く飛び続けた。
何日飛んだだろうか、ようやく見つけた温かな土地。そこには他のツバメたちが集まり、静かに巣作りをしていた。ツバメはその地で仲間たちと共に夏を過ごし、再び離れ故郷に戻る日を心待ちにした。
ツバメの冒険は終わらない。次の春、また新たな旅が始まることを、ツバメは心の中で確信していた。
今、ツバメの冒険は始まったばかりだ。
お題: さぁ冒険だ
#睡蓮
一輪の花が咲くときにこそ
美しさが命を宿す
お題: 1輪の花
#目に見える魔法
たまに自分ってどうして人間なのかなって思う。
偶然この時代に生まれて、偶然この日本という場所で生まれ育って、今この瞬間を生きる、地球上の何千億もの生き物のうちの1人。
動物とか植物とか虫だって良かったのに、なんで人間なんだろう。流石にゴキブリとかカメムシは嫌だけど。
別に人間が嫌な訳ではない。好きな訳でもないけど。
ただ、地球上にはたくさんの生き物がいて今この瞬間も脈打っている。
人間として地球で生きているこれこそまさに神様とやらがくれた、目に見える魔法なのかなって思う1人の人間である。
お題: 魔法
#虹🌈
あの日、空は不安定だった。暗い雲が広がり、遠くで雷が鳴っていたけれど、僕たちは傘もささずに歩き出した。君が笑いながら言った。
「雨が降ってるうちに、歩いてみようよ。」
僕は君の言葉にただ頷き、二人で歩き出した。雨に濡れることさえ、君となら楽しめる気がしていた。
空の奥から、まるで光のカーテンが引かれるように、雲が割れていった。
「見て!虹だ!」
君の声が弾んで、僕も顔を上げた。確かに、空の端から端まで虹がかかっていた。あの日、君と見た虹と同じような虹。
「すごいね、きれいだね。」僕は思わず呟いた。
君は虹を見ながら、しばらくしてから静かに言った。
「覚えてる?あの日も、こんな風に雨が降っていたね。」
驚いた。あの日、一緒に見た虹を、君も覚えていたんだ。あの時は、まだ幼くて何もかもが新しくて輝いていた。虹が架かる瞬間、君の顔が真剣で、でも嬉しそうに見えたのを覚えている。僕もその時、心の中で何かが弾けるような気がして、強く君の手を握った。
あれから何年経ったか。君と過ごした時間の中で、色々なことが変わった。
「君と見た虹、今も覚えてるよ。」僕は静かに言った。
君は微笑んで答えた。
「もちろん、覚えてる。あの時みたいだね。」
その言葉が、まるで夢のように僕の心に響いた。あの日、あの時と同じように、虹を見ている二人がそこにいるような気がした。
でも、今、僕たちはそれぞれの道を歩んでいる。君と過ごした日々も、もう遠い過去になってしまった。
「今度、また一緒に虹を見に行こう。」
そう言って、君が手を伸ばす。その手を僕は握り返すことができないけれど、心の中でしっかりと繋がっていると感じた。
虹は空の向こうに消え、雨上がりの静けさが街を包み込んでいった。だけど、君と見た虹の記憶は、今も僕の中で色鮮やかに輝き続けている。
僕はゆっくりと空を見上げ、心の中で呟いた。
「ありがとう、君と見た虹。」
お題: 君と見た虹
短編小説風のつもりがつい長々と書いてしまいました...
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m