クラリネット🎼

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#虹🌈

あの日、空は不安定だった。暗い雲が広がり、遠くで雷が鳴っていたけれど、僕たちは傘もささずに歩き出した。君が笑いながら言った。

「雨が降ってるうちに、歩いてみようよ。」

僕は君の言葉にただ頷き、二人で歩き出した。雨に濡れることさえ、君となら楽しめる気がしていた。

空の奥から、まるで光のカーテンが引かれるように、雲が割れていった。

「見て!虹だ!」

君の声が弾んで、僕も顔を上げた。確かに、空の端から端まで虹がかかっていた。あの日、君と見た虹と同じような虹。

「すごいね、きれいだね。」僕は思わず呟いた。

君は虹を見ながら、しばらくしてから静かに言った。

「覚えてる?あの日も、こんな風に雨が降っていたね。」

驚いた。あの日、一緒に見た虹を、君も覚えていたんだ。あの時は、まだ幼くて何もかもが新しくて輝いていた。虹が架かる瞬間、君の顔が真剣で、でも嬉しそうに見えたのを覚えている。僕もその時、心の中で何かが弾けるような気がして、強く君の手を握った。

あれから何年経ったか。君と過ごした時間の中で、色々なことが変わった。

「君と見た虹、今も覚えてるよ。」僕は静かに言った。

君は微笑んで答えた。
「もちろん、覚えてる。あの時みたいだね。」

その言葉が、まるで夢のように僕の心に響いた。あの日、あの時と同じように、虹を見ている二人がそこにいるような気がした。

でも、今、僕たちはそれぞれの道を歩んでいる。君と過ごした日々も、もう遠い過去になってしまった。

「今度、また一緒に虹を見に行こう。」

そう言って、君が手を伸ばす。その手を僕は握り返すことができないけれど、心の中でしっかりと繋がっていると感じた。

虹は空の向こうに消え、雨上がりの静けさが街を包み込んでいった。だけど、君と見た虹の記憶は、今も僕の中で色鮮やかに輝き続けている。

僕はゆっくりと空を見上げ、心の中で呟いた。

「ありがとう、君と見た虹。」


お題: 君と見た虹

短編小説風のつもりがつい長々と書いてしまいました...
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m

2/23/2025, 6:24:35 AM