《いない》
「百物語やろうよ!」
友人がとんでもないことを言い出した。もちろん私も参加した。拒否権なんてそんなもの、私達には更々無い。
お泊まり会設定で私の家でやることになった。正直嫌だったけど面倒事は避けたい主義だったので了承した。断らなかった、いや、断れなかった自分が心底恨めしい現在である。
真夜中、私含める5人の友達が私の家に集結した。
1人ずつキャンドルに火を灯していく。友人いはく、最後の1人の話が終わった時点で怪奇現象が起こるという。途中棄権は許されない。
午前1時半、何か起こるかなと期待したものの特に何も起こらず残念がる友人2人と、安堵する1人。早く寝たいと大きなあくびをしたのは私だけだったらしい。
その日は普通に寝た。時計が深夜2時を指すところだった。
次の日、私はテストの課題に追われて深夜2時近くまで起きていた。ほとんど閉じている目を擦りながら
と、薄暗い廊下にぽつんと一筋小さな灯りがあった
。気付いた途端、身体中の血が凍りつくような感覚があった。
「キャンドル...」
気付いた時はすでに遅かった。昨日の夜から今までずっと、異変に気付けなかった私をとても恨んだ。
午前2時、丑三つ時、霊界と現世がもっとも近くなる時間帯に起きていてはいけない。
お題:キャンドル🕯️
《うさぎ》
冬が近くなると「エゾユキウサギって冬以外の時期は茶色いんだよ。」って小学生の頃、飼育員さんから言われたのを思い出します。
だんだんと雪に染まってくみたいに真っ白になるのが素敵だなと思って
冬になったらエゾユキウサギを見るのとスケートをしに北海道へ遊びに行っています🐇❄️
我ながらにやる事が幼くて照れくさい
お題: 冬になったら
《待ちぼうけ》
馬鹿の一つ覚えね。来るわけないのにきっと来ると信じて貴方を待つ私が馬鹿みたい。
ずっと昔に貴方は私の前から消えたでしょ。
どれだけ自分に言い聞かせても信じ続けるのは多分、一緒にいた時間が長過ぎるから。
別にいいわ、1人でも。1人の時間を全力で楽しんでやる。
そして、学ばない私は今日も待ちぼうけ。
お題: はなればなれ
祖母から聞いた実話です。
《変じられた能力》
今まで猫を触ったことがなかった。絶対に触らないでって親から言われてたんだもの。
でも、人って不思議な事に言われたことには逆らいたくなっちゃうものでしょ?
小さい頃、とても可愛いらしい子猫を見つけた。
真っ黒の毛に目が夜空みたいな子猫だった。猫ってこんなに可愛かったんだと。
その時、生まれて初めて猫を触った。そして親が猫を触るなと言っていた意味を初めて理解した。
お題:子猫
秋風のふく日に
放課後
静まり返った音楽室。足音のしない廊下。
窓辺から差し込む陽光が薄暗く教室を照らす。
まだ秋か、なんて事を言いながら、キツく締め過ぎたリガチャーを緩めてストールを肩にかける。
秋風が無人の廊下をヒューっと通り過ぎる音が聞こえた。
葉が赤く染まる。小鳥が囀り、コスモスが校舎を華やかに彩る季節、
音楽室から1人、どこか寂しい管楽器の音色が響いた。
お題:秋風