「にーに!、サンタしゃんはほんと〜にいる〜〜??」
澄んだ瞳をこちらに向けて尋ねてきた
俺は応えた
「もちろん、いるぞっ」
そう言うと、
妹は、嬉しそうに、足をバタバタさせた。
そんな妹を見て、俺はホッとしたが、少し戸惑った、、、
実のところ、今年は''サンタ''がいない。
いや、「''プレゼントを渡す人''がいない」
と言った方が正しいだろう。
去年までは両親がいたが、、もういない。
今は、俺と妹の2人だけだ。
「サンタさんには何を願うんだ?」
俺は、平然を装って、聞いてみる。
「、、あのねぇ〜、」
妹はニコニコしながら、
俺の耳に手を当てて、コソコソと話してきた。
「''にーに いつも おしごと がんばってるから
やすませてくだしゃい''って言うのっ」
妹は、満足そうに顔をほころばせた。
俺は言葉が返せず、 涙ぐみそうになり、下唇を噛みしめた。
妹を救うため、彼は走った。
嵐が来ようとも、彼はひたすら走った。
怒号を浴びても、彼は妹のところへ向かって走り続けた。
路地裏を進み、狭い小道を進み、
ついに、古びたダンボール箱の前までたどり着いた。
彼は妹の名を呼ぶ。
しかし返答はない。
辺りを探しても妹の姿はない。
すると、背後から足音が聞こえた。
慎重にふりかえると、
そこには妹を抱えた大きな人間が立っていた。
彼は、咄嗟に「俺の妹を離せっ!!」と必死に言うが、
人間は動じず、微笑んでいる。
人間は、「怖がらないで、」と言うが、
彼には伝わらない。
その時、妹が人間の腕からジャンプをして、
彼のもとへ近づき、こう言った。
「この人ね、空腹で瀕死状態だった私を助けてくれたの!」
彼は目を丸くした。
「、、、へ?」
呆気にとられていると、人間が近づき、手を伸ばしてきた。
彼は少し考えたあと、意を決して人間の手にそーっと近寄る。
すると、人間は柔和な笑顔を見せ、
彼を優しく撫でた。
今日は地元のお祭りだ。
戦隊モノの仮面をつけて走る男の子や、
おめかしして誰かを待っている女の子、、、。
私も去年までは''そこ''にたっていたのかと思うと
目の奥がじんとして視界がにじむ
「もうすぐ一周忌か、、」
そんなことを呟きながら母との会話を思い出す
「ままっ!!あそこの焼きそば食べよーよ!」
「もうっ!、高校生なのよ?」
そう言って母がフフっと笑う。
そんな母につられて、私もクスッと笑ってしまう。
忘れていた母との思い出が
今では鮮明に蘇ってくる。
「あっ、この屋台、、」
出店を見て回っていると、
母と一緒に食べた焼きそばの屋台が立っていた。
「、、、あの頃に、、っ、、、戻りたいっ、、、」
張り詰めていた涙腺が一気にゆるんでいく