チリパウダー、コショウにジンジャー、香辛料たっぷりのぽかぽかチキンスープ。パンといっしょに召し上がれ。
パパのお酒のおつまみはムール・フリット。
シェパーズ・パイにコテージ・パイ、日替わりでいろんなパイを楽しむ。
スクワッシュの料理も定番ね。
ほくほく、ぽかぽか、じーんわり、心まであったかくなる料理たちの出番がやってくる。
この家で暮らすようになってから知った、家庭の味。
それがわたしの、冬のはじまり。
『冬のはじまり』
「私はもう、疲れてしまった」
珍しくパパが弱音を吐く。
「だめよ、もう少し頑張って」
わたしはパパの弱音を許さない。
「もう、終わりにしてもいいだろう?」
「だめ、だめ、終わりにしないで。だってほら……」
わたしの言葉が正しいって証明するみたいに、「ぶにゃああん」という要求鳴きが響き渡った。
「ほらね、まだブラッシングを終わらせないでって言ってるわ!」
今日は、わたしが決めた猫のベルナルドのお誕生日。パパにはめいっぱい尽くしてもらいます!
『終わらせないで』
愛情を色であらわすとしたら何色だろう?
赤? ピンク? それともオレンジ?
わたしがまっさきに思い浮かべたのは、パパの瞳の色。
わたしを見るときのそれは、愛情の色をしている。
「愛情って何色だと思う?」
当のパパに聞いてみたら、ちっともロマンチックじゃない答えが返ってきた。
「感情に色はないだろう?」
『愛情』
ひんやりと冷たいものがわきの下に当てられる。水銀の体温計のメモリがゆるやかに上がっていく。
「微熱だな。本格的に熱が出る前に養生して、早く治してしまおう」
パパが優しく頭をなでて、ふとんをかけなおしてくれる。
身体がだるいな。病気っていやだな。
なんだかすごく調子が悪い気がして、怖くなる。
「もうなおった!」
眠ったらすごく元気が出てきた! パパの看病ってすごい!
「体温計の温度は38度だぞ! ちゃんと寝てなさい!」
だってなんだか走りたい気分なんだもの。熱が高い方が元気になるのってなんでだろ?
『微熱』
今日はパパとピクニック。太陽の下で食べるごはんっていつもよりおいしく感じる。草のにおいを感じながら、バスケットから取り出したサンドウィッチをほおばる。パパと一緒に用意した、我が家特性の味は最高!
とっても幸せな時間。パパは目を細めて、手をかざしつつ太陽の方を見ている。わたしも同じようにしてみるけれど、珍しい光景は特にない。あるのは青空と雲と太陽。
「何を考えているの」
「きっと今私の体の中でセロトニンが分泌されてるな……と考えていた」
もう!パパったら、太陽の下で考えるのがそんなこと?
『太陽の下で』