パパが冬になると着るアーガイルセーターはとっても素敵。
パパが着てるから素敵に見えるのかもしれないけれど、わたしはとってもお気に入り。あんまりにもわたしが大好きだって言うから、パパが「サイズが合うようになったら君にあげよう」って約束してくれたくらい。
だけどその約束は、翌週には叶ってしまった。
「洗濯をしたら縮んでしまったんだ」
まだ主夫初心者のパパは時々失敗をする。セーターって、そのままお洗濯したらダメなんだって。それを知らずに洗濯をしたら、わたしサイズのセーターができあがりってわけ。
『セーター』
おんなの子だからって舐めてるなら許さない
ちっちゃくたって木登りなんかできるんだから!
てのひらが痛くたって泣かないもん
いますぐそこまで登ってやるわ
くやしがる顔を見るのが楽しみね!
「どうしたらそんなにボロボロになれるんだ……」
パパが心配半分、あきれ半分って顔で私の様子にため息をつく。
「男の子と遊んでて、木登りに失敗しただけよ」
「危ないから、パパが見てるときにしてくれ」
やっちゃだめって言わないパパが大好き!
『落ちていく』
「夫婦ってどんなもの?」
歌手のママは、ロマンティックな返答をくれた。
「相手を尊敬して、思いやりを持って大切にしあう関係よ」
元経営者で変わり者のパパったら、ロマンスのかけらもないことを言い出す。
「『家族』という組織の共同経営者だな。ママが社長でパパが副社長だ」
経営者を辞めて主夫に『転職』したんだって言い張るパパは、いつまでも会社ごっこが辞められないみたい。
のんきなママは「私が社長だなんて、責任重大ねぇ」なんて笑ってる。うちはこれだからうまくいってるんだろうな。
『夫婦』
「どうすればいいの?」
わたしが困ってもパパはすぐには答えをくれない。
「どうしたらいいと思う?」
パパの質問に答えていけば、自分で答えにたどり着ける。間違えたって大丈夫。次に活かせばいい。
「どうすればよかったんだろう?」
ふたりで考える。パパだって間違いや失敗もある。
ママのお誕生日のためにふたりで焼いたケーキ。スポンジが膨らまず、なんだか太めのパンケーキみたい。
「オーブンの温度かもしれないな……材料に間違いはないはずだが」
パパは問題点を洗いだそうと考えこんでしまう。
「もう! ママが帰ってきちゃう! この生地でケーキを完成させようよ!」
はっとしたパパと、めいっぱい素敵に生地を飾ることにした。
『どうすればいいの?』
「どうして失くしちゃうの? あなたの宝物だったでしょ?」
わたしは猫のベルナルドを捕まえて問いただす。あんなにお気に入りで毎日遊んでいたおもちゃを、また失くしてしまったのだ。
「さっきまで咥えて振り回してたじゃない」
彼の周囲を探しても、どこにも落ちてない。ちょっと目を離したすきに、いつだって彼はおもちゃを失くす。
腹が立ったわたしは、パパにいいつけてやることにした。
「パパ! ベルナルドったら、わたしがプレゼントしたおもちゃを失くしちゃったのよ!」
わたしが叫ぶと、パパがリビングにやってきた。
「ああ、それならきっと、彼の宝箱にしまったんだね」
パパは訳知り顔で笑ってる。
「宝箱?」
「ソファの下を見てごらん」
『宝物』