君が居なくなった。
風は冷たいのに、まだ汗ばむような秋の夜。
私達は2つに戻った。
暑がりな彼を知っていたから、私はいつも冷房をつけて帰りを待った。それなのに、彼が最後に言った言葉は、
「この部屋は、いつも少し肌寒かった。」って。
帰ってくるなり、
「別れよう。」
なんて言われたときには、身震いした。
私が部屋の寒さを知ったのは、それが初めてだ。
君の背中に触れながら寝た夜。
指先に感じる熱は、君を暖めているものだと思っていた。
本当は、君から奪っていたのかもしれないのに。
この涙は、流れてはいけない。
君を知らず、知ろうとせず、奪い、傷つけていた。
私の罪は、後悔や絶望の涙を許してはくれない。
だから、この涙に理由などない。
喜劇であれ。
この別れが、貴方の人生の喜劇であれ。
僕と一緒に生きて。
何もかも投げ出して、一緒に暮らそう。
だって君が好きだからって。
言って。
貴方の口から言って。
曇りが好きだ。
秋が好きだ。
夕暮れが好きだ。
何かと何かが混ざりあう途中の、あの時間が好きだ。
バイト中の彼に
「今日いつ上がり?」
返信は来ないって知ってるくせに
まだ改札は通らずに、待ってみる。
好きよ。
退屈な時間も無駄な時間も
貴方がいてくれたら幸せなの。
今そういう時間を過ごせて、幸せなの。
弓道が好きだ。
弓道で使う道具に「矢」がある。
私は、その矢に春夏秋冬の柄を持たせ、私の弓道人生を4つのフェーズに区切ろうと考えている。
春。弓道を知り、魅了され、青春を費やした高校時代。
私の春。
矢の柄は「桜」
そして大学生の今。春が過ぎ、初々しさこそ失ったものの、春に芽吹いた心には、新たな瑞々しさが纏いはじめた。
夏。
矢の柄は「夏祭り」
この度私が買った矢は、白い羽根に黄色い花と朱のグラデーションが付いたものだ。
秋を先取りしたような色である。だから困っている。
次の秋色は、何色なのだろうかと。
ただ、困りつつも心配はしていない。
今の私に、朱い夏が見えたように、次の私にもふさわしい秋色が見えるはず。
見えなければ、私の夏はまだ終われない。