今、手を離したら
君が、君がいなくなってしまう気がして
ぐっと力を込めた。
いたい、いたいよ、って君が言うから
僕も、僕もいたいよ、いたいよ、
ずっといたいよ、とさらに力を込めた。
どこにも行かないで欲しい。
僕だけを見ていて欲しい。どうか、君の綺麗な瞳で
僕だけを、写していて欲しい。
ずっと一緒に居たいよ。
目を閉じれば思い出す。
昔、僕が3歳くらいの頃におじいちゃんが亡くなった。
初めての葬式、みんなが泣いている。
僕は何も分からずにぽつんと、
ふと、おかあさんに呼ばれ、白い箱の前に立つと、
そこには目を閉じたおじいちゃんがいた。
『おじいちゃんの口に、これ塗ろうね』
手渡されたのはリップのようなもので
僕は動かないおじいちゃんが、怖くなってしまって、
いやだ、と走って行ってしまった。
次におじいちゃんを見たのは写真の中
にこにこと、いつものおじいちゃんが写っていた。
僕は、さっきの起きないおじいちゃんが
どうしても、どうしても忘れられなくて
泣き出してしまった。
はじめて、人の死というものを感じたのだ。
もう会えないのだと。
いままで、みたこともない
やわらかいひかり、あったかくて、。
きょうは、わたしがわるいことをしたから
おうちにいれてもらえなくて、
きょうは、いつもよりさむくて、
ごめんなさい。またもらしてしまいました。
わたしはだめなこだから、
だんだん、てもあしもつめたくなって、
だんだんおとがなくなってきて、
きがつけば、ふわふわであたたかいところにいたの。
おにいさんに、もうおかあさんにはあえないよって
いわれたの、なんだか、かなしくは、なかったよ。
さようならおかあさん。
さようなら
そんな目で見ないでよ。
僕は、僕はやってないんだ。ほんとうだ。
そう、ほら、僕の他にも、いただろ、
僕じゃない。僕じゃないんだ。
どうして僕ばっかりうたがうんだ、、
前回のことは前回で、
今回に結びつけないでくれ、
本当に僕じゃ、僕じゃない
そんなに、睨まないでくれよ、
違う。
ちがう、。。。。
それはそれは無邪気に笑う貴方が愛おしくて
私があげたイチゴ味のキャンディを
パクッと頬張り、膨れた頬に
触れることを許して欲しい。
そうね、思い返せば沢山怖い思いをさせてしまって
それでも貴方は、一雫の涙すら見せなかった。
いいのよ、いいの
素直に笑って、泣いて、怒っていればいいの。
我慢しないでいいのよ。大丈夫よ
何も言えないことばかりでも大丈夫
無理に言わなくとも、大丈夫
貴方が幸せであれば、大丈夫なの。
どうか、どうか
貴方が貴方らしくいられますように、と
傍を後にする。