き。

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目を閉じれば思い出す。
昔、僕が3歳くらいの頃におじいちゃんが亡くなった。
初めての葬式、みんなが泣いている。
僕は何も分からずにぽつんと、
ふと、おかあさんに呼ばれ、白い箱の前に立つと、
そこには目を閉じたおじいちゃんがいた。
『おじいちゃんの口に、これ塗ろうね』
手渡されたのはリップのようなもので
僕は動かないおじいちゃんが、怖くなってしまって、
いやだ、と走って行ってしまった。
次におじいちゃんを見たのは写真の中
にこにこと、いつものおじいちゃんが写っていた。
僕は、さっきの起きないおじいちゃんが
どうしても、どうしても忘れられなくて
泣き出してしまった。
はじめて、人の死というものを感じたのだ。
もう会えないのだと。

10/17/2024, 10:14:50 AM