ゆま

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7/15/2025, 2:19:06 PM

分かち合ったその瞬間。
今まで以上にあなたと結ばれた気がした。

深く、深く、穴を掘り、
丁寧に、丁寧に、葬った。

暗く湿った土の中。
永遠に、隠し通せると思っていたのに。
あなたによって暴かれた。

やわらかに微笑んで。
ただ、しずかに包み込む。

その温もりを、信じると決めた。



【二人だけの。】

7/15/2025, 9:48:47 AM


緑のカーテン。
蝉の音のシャワー。

くぐり向かうは君のもと。

夏に吹く風がさわやかなのは、きっと弾む心のせい。


【夏】

6/30/2025, 2:21:39 PM

 ひらり、ふわり、風に揺れながら。
 やわらかな生地は、それでもしっかりと外界と私を隔てる。

 ここにあるのは私だけの花園。
 逃げ込んで作り上げた理想郷は、誰の目にも晒されない。
 
 薄く透ける太陽の光。わずかな隙間からそよぐ風。
 今の私はこれで十分。

 いつか思い切り開け放つその日を待つように。
 包まれて、守られて。
 レースの内側で、私は浅く息をする。
 

【カーテン】

6/25/2025, 1:02:52 PM


 君にもらったこの愛を、どんどんどんどん積み上げて。
 そうすればいつか、あの星にまで届くだろうか。
 
 出会ってから今日まで地道に積み重ね、今はようやく雲の上。
 景色は悪くないけれど、風に煽られぐらぐらぐらぐら。

 丁寧に積み上げてきたと思っていたのに。
 見下ろせばずいぶん歪な形。嵐ひとつで崩れそう。

 天井に届くが先か。
 真っ逆さまに落ちるのか。

 祈るように。願うように。
 私は今日も積み上げる。

 

【小さな愛】

6/24/2025, 3:58:44 PM


 ねえ、知ってる?
 空が青いのはね。神様が世界を作った時、青の絵の具がいっぱい余ったからなのよ。
 余った絵の具を贅沢に、神様はお空に青をぶちまけたの!

 真っ赤なランドセルを背負ったあの子は、そう言って得意げに笑っていた。
 

 久方ぶりに地元に帰り、ふらり。かつての通学路を歩いてみる。
 チューリップの花壇も、押しボタンの横断歩道も、記憶よりもずっと小さい。重たいランドセルを背負って必死に歩いたあの道を、大人の歩幅は簡単に踏み越えていく。

 寄り道の公園。
 平日の真っ昼間だ。子供達の声はなく、佇むのは僕一人。
 風に揺れる寂しげなブランコ。なんとなく呼ばれたような気がして、少しだけ辺りを見回してから腰掛ける。
 わずかに地面を蹴れば、軋んだを音を響かせて、ブランコは歌い出す。
 キィ、キィ。錆びついたメロディ。
 頬を撫でる風。童心を連れる浮遊感。
 木々の隙間から見える空が、近づいては遠ざかって。
 蘇るのは過ぎ去りし日々。


 いつも、隣にいたあの子。
 隣の家に住んでいたあの子。

 見上げた空の青さの理由を、得意げに教えてくれたっけ。

 野原は緑、花々は赤や黄。アスファルトは灰色で、たしかに青は使わない。
 そんなふうに納得して、僕はすっかり彼女の言葉を信じていた。

 ちょっとまって。青色は、海にたっぷり使うじゃないか!  
 
 気づいた時には、あの子はもう、遠くの街へと越してしまった。

 それっきり。思い出の奥底にいた面影。
 はずむように揺れるおさげ髪。それ以外はなにも。
 声も、顔も思い出せないけれど。今もどこかで元気にしているのだろうか。

 僕の世界の空はすっかり理屈で出来上がってしまったけれど。彼女の世界は今もまだ、神様の絵の具でできているのだろうか。
 
 靴裏のブレーキで思い出をせき止めて。僕はゆっくりとブランコを降りる。

 ――そうだったらいいな。

 掌に残った鉄の匂いを嗅ぎながら、僕はもう一度空を見上げた。




【空はこんなにも】

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