『バイバイ』
最後に会ったのは、
如月に入る前だったか
私の知らないところで
私が知らないときに、
私を置いて、
何処かへ行ってしまうの。
最後に会ったのは、
睦月、雪が轟々と吹き荒ぶ中で
鼻の下までマフラーを巻いて
バイバイと手を振った。
もう希望がない、
あの試験の帰りに。
『イブの夜』
ちらちらと降る雪。
鳴り響くクリスマスソング。
きらびやかなイルミネーションの電飾。
すきだよ、
なんてあちらこちらから聞こえて、
手を繋ぐ男女の影。
もう、
この世界は、私には眩しすぎる。
きっと、こんな色付いた世界が。
きっと、この世界に、
私は釣り合わない。
イブの夜。
街明かりとは逆の、
私の心は
耐えきれない。
もう、この世界なんていらない。
もう、こんな世界なんて
私にはもったいないから。
『ゆずの香り』
早くいなくなってしまいたい
消えてしまいたい
もう忘れ去られてしまいたい
自己嫌悪、自己嫌悪の繰り返し。
冬の夜に静かな街で
積もった雪に静かに
大の字に寝そべった。
頭から足先が震える中で
隣の家の風呂の湯気。
暗がりに佇む白い湯気から
ほんのりと、
ゆずの香り。
こんな状況でも、
なんだか心が落ち着く気がする。
もう息絶えてしまいたいのに。
まだこの世界で生きていたいなんて
『イルミネーション』
#2)
だって、貴方がいなければ、
みんなこの過去はなくなってしまう。
すべて、
この心に残った温もりも、
貴方の声も、顔も、やさしさも、
全部。
どうして
いなくなってしまうの
私は、
私の中のガラスの器は、
いつまでも空っぽのまま。
一緒に飲んだコーヒーも、
手を繋ぎながら見たイルミネーションも。
きれいだね、なんて言いながら。
その記憶を最後に。
『愛を注いで』
#1)
あなたにとっての。
私にとっての。
温かいもの。
あたたかくて、
でも
どこか寂しくて
貴方がいなくては
私の人生は、
空のガラスの器。
貴方がいなくては
私の器は空っぽのままで、
そのうちきっと割れてしまう。
だから、
貴方が
愛を注いで