『愛情』
何度も何度も、
何かに苛ついて、
何かを言い訳にして、
傷付けた。
そして、失ってから気付く。
母親という存在。
彼女に何度も罵詈雑言を吐いてきた。
数え切れないほど。
そして、今になって後悔する。
あのとき気付いていれば。
あのときわかっていれば。
やさしく言葉をかけてくれたこと。
雨の中送り迎えをしてくれたこと。
耳にたこができるほど心配してくれたこと。
叱って誤った道を正してくれようとしたこと。
もっと早く、気付いていれば。
それが、世界で一人の母から授かった、
世界で一人の愛情なのだと。
『微熱』
思いがけない雨で、
あと3時間は降るんですって。
帰らなきゃいけないのに、
とうてい傘なんて持ってない。
鞄を抱えて、
ただひたすらに帰路を走る。
頭頂部に当たる冷たい水。
肌に纏う寒気。
寒さに固まり、動かしづらい足。
その足に染み込む大量の水。
そして翌日。
頭痛とともに倦怠感。
持ち上がらない腰。
回りにくい首。
微熱
そう連絡するとお見舞いに来てくれた。
少し寝てしまった後、目を開けると、
私が恋心を抱いている彼がいた。
やさしく声をかけてくれる。
なんだか、微熱も悪くないかも。
なんて、
今日だけは許して
『太陽の下で』
少々白く。
少々霞み。
少々凍り。
上を見上げると、
電線の間から見える低い太陽。
変わらず冷える外気温。
息を吐けば、白く、
心のように冷たい。
息を吸えば、冷たく、
心のように凍りそう。
太陽の下で。
頭頂部に当たる太陽の光は、
じんわりと身体を温めてくれるような気がして。
そのやさしい光に、
凍った心も溶けてしまいそうで。
『落ちていく』
青い空
白い雲
手を伸ばす先、
重力に逆らう髪の先。
強く光る太陽。
あの柵の上から飛び出して、
背中を重力に沿わせ、
身を任せ。
落ちていく。
地面の上へ。
世界の果てまで。
この暗闇の、もっと深くまで。
落ちていく。
衝撃が走る。
痛みが伴う。
暗闇へ。
意識まで。
落ちていく。
私は、
どこまでも。
『どうすればいいの?』
ただ淡々と送る毎日。
まるで心配事など何もないように振る舞い、
楽しければ広角を上げ、
何かあれば頭を下げた。
ただそんな毎日。
それでも、
少しずつ、
壊れていく。
人間というものは愚かで、
寛容な人間がどれほど少ないことか。
自分が嫌であれば、伝えなければ分からない。
また然り、伝えられなければ、分からない。
故に、はっきりと、言葉を発する。
気が付けば、
その人は私の近くにはもういなくなった。
正解は、なんだったのだろう。
テストみたく、解答が明確にあればいいのに。
どうすればよかったんだろう。
私は、
どうすればいいの?