『ゆずの香り』
早くいなくなってしまいたい
消えてしまいたい
もう忘れ去られてしまいたい
自己嫌悪、自己嫌悪の繰り返し。
冬の夜に静かな街で
積もった雪に静かに
大の字に寝そべった。
頭から足先が震える中で
隣の家の風呂の湯気。
暗がりに佇む白い湯気から
ほんのりと、
ゆずの香り。
こんな状況でも、
なんだか心が落ち着く気がする。
もう息絶えてしまいたいのに。
まだこの世界で生きていたいなんて
『イルミネーション』
#2)
だって、貴方がいなければ、
みんなこの過去はなくなってしまう。
すべて、
この心に残った温もりも、
貴方の声も、顔も、やさしさも、
全部。
どうして
いなくなってしまうの
私は、
私の中のガラスの器は、
いつまでも空っぽのまま。
一緒に飲んだコーヒーも、
手を繋ぎながら見たイルミネーションも。
きれいだね、なんて言いながら。
その記憶を最後に。
『愛を注いで』
#1)
あなたにとっての。
私にとっての。
温かいもの。
あたたかくて、
でも
どこか寂しくて
貴方がいなくては
私の人生は、
空のガラスの器。
貴方がいなくては
私の器は空っぽのままで、
そのうちきっと割れてしまう。
だから、
貴方が
愛を注いで
『愛情』
何度も何度も、
何かに苛ついて、
何かを言い訳にして、
傷付けた。
そして、失ってから気付く。
母親という存在。
彼女に何度も罵詈雑言を吐いてきた。
数え切れないほど。
そして、今になって後悔する。
あのとき気付いていれば。
あのときわかっていれば。
やさしく言葉をかけてくれたこと。
雨の中送り迎えをしてくれたこと。
耳にたこができるほど心配してくれたこと。
叱って誤った道を正してくれようとしたこと。
もっと早く、気付いていれば。
それが、世界で一人の母から授かった、
世界で一人の愛情なのだと。
『微熱』
思いがけない雨で、
あと3時間は降るんですって。
帰らなきゃいけないのに、
とうてい傘なんて持ってない。
鞄を抱えて、
ただひたすらに帰路を走る。
頭頂部に当たる冷たい水。
肌に纏う寒気。
寒さに固まり、動かしづらい足。
その足に染み込む大量の水。
そして翌日。
頭痛とともに倦怠感。
持ち上がらない腰。
回りにくい首。
微熱
そう連絡するとお見舞いに来てくれた。
少し寝てしまった後、目を開けると、
私が恋心を抱いている彼がいた。
やさしく声をかけてくれる。
なんだか、微熱も悪くないかも。
なんて、
今日だけは許して