『花咲いて』
白や桃や蒼、個々に違う色の花々。
背に当たる強い光は暖かく、
花の季節を感じさせる。
花咲いて。
風に揺れ。
伸び、開き、
咲き誇れ。
まるで、自分の才能だと誇るように。
『もしもタイムマシンがあったなら』
あの頃の、後悔。
もしもタイムマシンがあったなら。
あるとしたら。
彼女に、もう一度、会いたい。
私が助けられなかった、彼女を、もう一度。
過去で未来を変える。
あの日の懺悔を。
あの日の後悔を。
──もう一度。
どうにもできないこの現実を、
タイムマシンで変えてやる。
もしも、そんなものがあったなら。
そんな道具があれば、
良かったのに。
もう、彼女は帰ってこない。
『私の名前』
私の名前、
ありきたりではあるけれど、
ちゃんと、意味が込められてる。
母親や父親が、どんな私になってほしいかっていう想いが、ちゃんと込められてる。
──その、大切な、はずの、私の、名前、
なんだったっけ。
もう、わかんないや。
もう、どんな名前でもいいや。
ねぇ、私の名前、ちゃんと呼んでよ。
『私だけ』
はじめは、なんともなかった。
ただ、周りの子達と笑って過ごせる毎日が欲しかった。
それに憧れた。
でも、日に日に居心地が悪くなっていった。
ただ、楽しい日々が欲しかっただけなのに。
自分だけ、遅れを取っているような気がした。
会話の内容にはついていけず、
自分から話しかけない限りは、話さず、
遠足のバスでは一人席にされた。
なんでだろう。
気に障るようなことをしてしまったのだろうか。
なんか、
私だけ。
私だけ。
『遠い日の記憶』
まだ、微かに残っている、記憶。
もう数十年も昔のことだけれど、
映像として、記憶している、
あの頃の話。
微笑みながら、私の頭を撫でる母。
喜びながら、私の脇を掴んで、持ち上げる父。
時間をかけて作られた、祖母のあたたかい料理。
眼鏡の奥で微笑む、祖父の瞳。
お姉ちゃん、と見上げる弟のまるい顔。
もう、詳しいことは、覚えていないけれど
昔の記憶が、此処に訪れるたびに、蘇る。
もう、あの人たちとは、会えない。
数十年も昔のことだけれど、
映像として、記憶している、
命の灯火が、消えた瞬間。
そして私だけが、生き残った。
生き残ってしまった。
それだけが、遠い日の記憶。
もう、ほとんど残っていない
微かな記憶。