『遠い日の記憶』
まだ、微かに残っている、記憶。
もう数十年も昔のことだけれど、
映像として、記憶している、
あの頃の話。
微笑みながら、私の頭を撫でる母。
喜びながら、私の脇を掴んで、持ち上げる父。
時間をかけて作られた、祖母のあたたかい料理。
眼鏡の奥で微笑む、祖父の瞳。
お姉ちゃん、と見上げる弟のまるい顔。
もう、詳しいことは、覚えていないけれど
昔の記憶が、此処に訪れるたびに、蘇る。
もう、あの人たちとは、会えない。
数十年も昔のことだけれど、
映像として、記憶している、
命の灯火が、消えた瞬間。
そして私だけが、生き残った。
生き残ってしまった。
それだけが、遠い日の記憶。
もう、ほとんど残っていない
微かな記憶。
7/18/2024, 3:36:50 AM