『月に願いを』
願い事。
誰に言っても、
何を言っても、
届かない、この願い。
真っ暗な空にぽつんと浮かび、
ぼんやりと光る、この月夜。
あの少しの光が、
私に一人の時間を与えてくれる。
あの少しの光が、
私の心を浮かせてくれる。
願い事。
星に願いを。
流れ星よりもっと明るく
月に願いを。
太陽よりもっと美しく
この月夜に、
願わくば。
『降り止まない雨』
梅雨。
もうそんな季節か。
窓の外では、しとしと と雨が降っている。
それは紫色や蒼色に染まった紫陽花に落ち、
ぽたぽた、と滴っていく。
それは、なんだか悲しい音。
そしてまた、数滴、水が滴る。
それは、なんだかしょっぱくて、
なんだか悲しい雨音。
それは、私の頬を伝って、滴る。
でもそれは、
ごくたまに、
笑みから溢れる雨だった。
『あの頃の私へ』
拝啓、
あの頃の私へ。
苦しかったね。
辛かったね。
でも偉かった。
自分のために、将来のために、
今のために頑張ってた。
自分なりに、必死で苦手なことを頑張ってた。
でもね、だからこそ、
今、すっごく楽しいよ。
あのとき頑張ったからこそ、今の私がある。
だから大丈夫、
自身を持って、
未来を信じて、
突き進んでみて。
たとえそれがどんな未来であろうと、
なんとかなるでしょう?
『逃れられない』
何度も、何度も、苦しんできた
何度も、何度も、泣いてきた。、
いつもいつも、
殴られたり、叩かれたり、
暴言を吐かれたり、ご飯が出されなかったり。
そんなものは日常茶飯事。
もう嫌だ。
勝手にわたしを産んだくせに、
なんで責任を取れないんだろう。
それどころが、
何故傷付けてくるんだろう。
きっと、この運命からは、
逃れられない。
この母親からは、もう逃れられない。
きっと、この社会からも、
もう逃れられない。
苦しい。
逃れたいのなら、
自らの首を、
縛り上げるだけ。
もう、逃れられないから。
『また明日』
あの子とは、これが、最後の会話だった
──また明日ね、ばいばい
そうやって笑う彼女を見送ってから、
その「明日」はもう来なかった。
いつまでも、次の日が来ると思ってしまう。
いつまでも、明日があると、思いたい。
手を振ったのが最後、
気付いたら、私を見送ってくれた彼女には、もう会えなかった。
そうか、私、死んだんだった。
明日がある彼女を、
果てしない空の上から見下ろす。
それはどこか悲しげで、どこか儚くて。
明日がある、なんて思った私。
私に明日がない、なんて思えなかった彼女。
これがきっと、最後の言葉。
「また明日」