さよならは言わないで
向かい合わせなのに目が合わないよりかは、背中合わせでも思いあえるような。さよならは言わない、曖昧さも長く愛せるから。この関係に名前がなくても、いつまでも手を繋げなくても、自分と相手を大切にすることをずっと忘れないように。でも、これが綺麗事のようにも感じるのは、本当は傷つくことが怖いからなのかもしれないな。どれだけ大人になって歳を重ねても、ここは6年前からずっと変わってくれない。でもやっぱり、だからこそ、貴方もさよならは言わないで欲しいの。
距離
目の前の夜景と君との数十センチ。遠くを見るその瞳は、手を伸ばしても永遠に届きそうにないよ。過去を懐かしんで今を見ない君は、大人っぽいのに未来が無くて悲しそうに見えた。私がそうだからかも知れないけど。ここが交わる場所なら、一生あわないね。
太陽の下で
すごいって思うのに上手くやれてるなんて言葉で片付けて、それ以上考えたくないよ。誰を見ても劣等感があるからさ、過去に戻って今を忘れるんだ。愛してほしいなんてたまに思ったりするけど、結局は自分が愛さなきゃ誰も見てやくれないんだ。悴んだ手のひらと冬の日。だからさ、あの太陽の下で話そうか。目なんか合わさずに。それがいいんだ。
落ちてゆく
最もの美しさを経て、一枚の葉っぱがひらひらと、また一枚、また一枚、何かに揺らされ落ちてゆく。木が寂しくなって、寒そうで、木の根元に落ち葉のマフラーを。枝から入る風は、いつもより冷たく感じたけど、皺の入った手を眺めては、また年を重ねたと、空を見上げて想いを馳せた。
キャンドル
ゆらゆらと心地よい雰囲気を保ったひとつの火が、ほんのりと香る匂いと、明かりを消した部屋の中で淡々と、だけど目を惹かれるように佇んでいる。澄み切った空間に身を任せてみた。それまで雲に隠れていた強くも麗しい月の光が差し込み、はっと我に帰る。ふと目をキャンドルへやると、炎は消えていた。