たくさんの想い出
良いも悪いも、どっちも私。
胸が苦しくなって受け入れられない部分もたくさんあって、それと同時に変わりようのない大切な想い出もある。長く生きてると、振り返る余白が多くて困っちゃうね。苦しめられたり助けられたり、自分にとって切り離せないもの。
目を瞑って、今を忘れて、
冬になったら
秋になったら、冬になったら、春になったら、夏になったら
冬にしかできないことってあると思う。布団をがばりと被って暖かくなってきたときの嬉しさ、熱くて痺れちゃうほどの指先、パラパラと降り始めた可愛い結晶達、ネオンの輝くツリー、愉快なクリスマスソング、新たな一年に胸躍らせる元旦、他には何があるだろう。寒さを乗り越えられるような暖かさを、今年はどれくらい感じられるだろうか。
子猫
道端で見かけた子猫、お母さんと一緒なんだね。暖かくしてるかな、ご飯は食べられてるのかな。幸せになってほしいんだ。ほんとうに。しっぽが、草むらへとふわりと去った。
秋風
冷たい風の中でも差し込む光が暖かくて、紅葉になりかけた様子に思いを馳せて、冬を思い浮かべては四季を感じる。パリパリと枯れ葉を踏みしめて歩くより、掬っては頭上に広げた葉を眺めた。
脳裏
靴を脱ぎ、コンクリートの冷えた廊下をぺたぺた音を立てながら、階段を勢いよく登る。忘れ物を取りに来た君と鉢合わせて教室で2人きり。緑の木々から夕日が差し込み、胸の鼓動が速くなった。
ドアのチャイムが鳴る。
怖くて、でも会いたくて、恥ずかしくて。
ドクンドクンとどうしようもないほど胸が鳴り、震える手を必死に抑え込んでドアを開けた。頬から耳へ、ジリジリと鉄板のような熱を感じる。君の足元と君の声。それだけ。本音と自信と弱さと怖さと、君への気持ちが強すぎて、頭がおかしくなったんだと思う。
外は、豪雨で、少し湿った封筒と、鉛筆で不器用に描かれて不安な君の文字。呆気なくて、でもこれで最後だと思った。
見慣れないスーツを着ている君が表れて、運命だと本気で思って、目が合って、分かった。
君が好きだ。