ゴミを捨てる時
紙ゴミを出すタイミングに間に合わなかったので、昔の教科書を破いて可燃ごみと共に出す事にした。
散り散りになった教科書を見てなんとなく
ああ。勿体ないことをした、と思うのだ。
化学や数学の勉強をしていた時は
なんだ、こんなもの。つまらないではないか。
何故大人はこのようなものに熱心になるのだろうか。
と思っていたのに
少し大人になった今では、とても面白い読み物として私の時間を削るのだ。
私は、こういう時に勉強の大切さを知るのだ。
明日は可燃ごみを出せる、今年最後の日。
昔のことを少しだけ思い出しながら、散り散りになった思い出を捨てるのである。
来年は、捨てたものよりもっと沢山の思い出が出来ることを願う。
(⚠️燃えるゴミに教科書を混ぜて捨ててはいけないという場所もあるでしょうから、自治体や県の指示に従うようおすすめ致します)
冬空の下で抱き合って
とりとめもない話をしよう。
今日何食べたとか、明日は今日よりもっと寒いんだって、とか。
大丈夫。何も心配することは無いよ。
ただ、元の関係に戻るだけ。
「雪の降る頃に戻る」
と貴方が言ったから、私は縁側で何度目かの冬を越しました。
その間、雪は一度も降らなかったけれど
私はなんでも良かった。
貴方が帰って来てくれるのなら。
私の心はダクダクと音を立てて、歓びに満ちることでしょう。
しんとした庭に独り言が落ちた。
郵便屋のスッとした声が庭の石を弾いて、玲瓏と響く。
「旦那さん、帰ってくるといいね」
郵便屋が帰りがけに呟くように言う。
期待していない声だった。
私は今日も、雪を待つ。
「ただいま戻りました」
「また来年来ようね」
そう言った貴方の顔は、どんなイルミネーションよりも輝いていて美しかった。
あの時、もし私が貴方の手を取れば
共に歩んでいれば、何か違ったのだろうか。
冷たい海に涙が溶けてゆく。
震える手で、空を掴んだ。
愛を注いで溢して
愛を注いで受け止めて
愛を注いでゴミ箱行き
愛を注いで返された
愛はなんと脆くて安いのだろう。
今だってホラ
そこかしこに落ちている。
お前のその姿こそが、愛なのだ。