「雪の降る頃に戻る」
と貴方が言ったから、私は縁側で何度目かの冬を越しました。
その間、雪は一度も降らなかったけれど
私はなんでも良かった。
貴方が帰って来てくれるのなら。
私の心はダクダクと音を立てて、歓びに満ちることでしょう。
しんとした庭に独り言が落ちた。
郵便屋のスッとした声が庭の石を弾いて、玲瓏と響く。
「旦那さん、帰ってくるといいね」
郵便屋が帰りがけに呟くように言う。
期待していない声だった。
私は今日も、雪を待つ。
「ただいま戻りました」
12/15/2024, 10:21:25 AM