君が知らない男の嫁になると聞いて、私がどんな思いだったか、君は知らないだろう。
男の暖かい腕の中で眠る心地はどんな風だろうか。
私は君の傍で暖かく過ごしていたかった。
ずっと優しく寄り添ってくれていた君は
私に飽きたのか、友達として話してくれる事もなくなった。
君の結婚式の日
私は君を遠くから祝福することしか出来なかった。
生まれ変わったら
君を包む、柔らかい雨になれたらいいな。
結婚式の日
家のポストに入れられた合鍵
優しく微笑みながら、遠くから私の事を見ている貴女。
私は貴女と幸せになりたかった。
ほんとうよ。
もし、生まれ変わることが出来たなら
どんな姿になっても、貴女の傍で眠りたい。
暖かい貴女の傍で。
私の胸の中に、青鈍の心臓が萌えている。
雫の滴る石や一筋の光を落とす木に、それはジンと音を立てて増えてゆく。
雨上がりのアスファルトや、ツルリとしたラムネの瓶などにも。
人間とはとても単純なもので、そういう美しいもの達に心揺さぶられる。
けれど、次の瞬間にはすでに他の物へ興味が向いている。
嗚呼、なんて愚かで愛おしいのか。
私はその一瞬に己の心を燃やしたい。
緩やかに訪れる死を待つ為に。
君の声が、聞こえる。
怒鳴るような大声で、声を震わせながら歌う君の声は
私の心臓を掴んで離さなかった。
君に彼女が何人いても、私は構わなかった。
お金として見られていても構わない。
ただ、一緒にいて
その声で優しく囁いてくれるだけでよかった。
人気になんて、なってほしくなかったのに。
秋の始まりに、いつも君を思い出す。
優しく微笑んでくれる君
冷え性な君の冷たい手
柔らかい唇。
その全てが僕のものだった時
君は幸せだったのだろうか。
「君のこと、大事にしたい」
「ン?何だ唐突に」
甘い香りが風に乗って二人の間を通る。
桃をかじりながら、天使はやわらかく微笑んだ。
「だからね、大天使様達に直談判に行こうと思うんだ」
「うん、?」
ギュ、と手を握られた悪魔は、驚いた様な顔をして芝生を何となく触っている。
天使が何を言いたいのか理解出来ず惚けていると、天使は悪魔の身体を抱き抱え飛び始めた。
「大天使様達に僕達の事を認めてもらおう。
僕達が結婚出来るように、ずっと一緒に暮らせるように」
そう言う天使の目は、希望に満ち溢れていた。
情報の追記
天使(男)
悪魔のことが好きで堪らないし結婚したい。
毎日一緒にいたいけれど、天国と地獄の規則のせいでたまにしか会えない。
桃が好き。
悪魔(性別不明)
天使の事が大好き。
ずっと一緒にいたいけど、難しい事だと分かっているので諦めた。
天使の好みに合わせて姿を変える事が出来る。
天使→→→→→→→(→→→→→→)←←←←←悪魔
って感じのクソデカ感情。