私の胸の中に、青鈍の心臓が萌えている。
雫の滴る石や一筋の光を落とす木に、それはジンと音を立てて増えてゆく。
雨上がりのアスファルトや、ツルリとしたラムネの瓶などにも。
人間とはとても単純なもので、そういう美しいもの達に心揺さぶられる。
けれど、次の瞬間にはすでに他の物へ興味が向いている。
嗚呼、なんて愚かで愛おしいのか。
私はその一瞬に己の心を燃やしたい。
緩やかに訪れる死を待つ為に。
君の声が、聞こえる。
怒鳴るような大声で、声を震わせながら歌う君の声は
私の心臓を掴んで離さなかった。
君に彼女が何人いても、私は構わなかった。
お金として見られていても構わない。
ただ、一緒にいて
その声で優しく囁いてくれるだけでよかった。
人気になんて、なってほしくなかったのに。
秋の始まりに、いつも君を思い出す。
優しく微笑んでくれる君
冷え性な君の冷たい手
柔らかい唇。
その全てが僕のものだった時
君は幸せだったのだろうか。
「君のこと、大事にしたい」
「ン?何だ唐突に」
甘い香りが風に乗って二人の間を通る。
桃をかじりながら、天使はやわらかく微笑んだ。
「だからね、大天使様達に直談判に行こうと思うんだ」
「うん、?」
ギュ、と手を握られた悪魔は、驚いた様な顔をして芝生を何となく触っている。
天使が何を言いたいのか理解出来ず惚けていると、天使は悪魔の身体を抱き抱え飛び始めた。
「大天使様達に僕達の事を認めてもらおう。
僕達が結婚出来るように、ずっと一緒に暮らせるように」
そう言う天使の目は、希望に満ち溢れていた。
情報の追記
天使(男)
悪魔のことが好きで堪らないし結婚したい。
毎日一緒にいたいけれど、天国と地獄の規則のせいでたまにしか会えない。
桃が好き。
悪魔(性別不明)
天使の事が大好き。
ずっと一緒にいたいけど、難しい事だと分かっているので諦めた。
天使の好みに合わせて姿を変える事が出来る。
天使→→→→→→→(→→→→→→)←←←←←悪魔
って感じのクソデカ感情。
「自分はこう思ってたのに、全く違う話で__
って事だったんですよ〜」
スタッフ達の笑い声がスタジオ内に響く。
良かった、ウケたみたいだ。
初めての番組で酷く緊張している。
ピン芸人というものは、一人でベラベラ喋って観客を笑わせなければならない。
スベッてもどうにかして助け合えるコンビやトリオより、よっぽど大変なのだ。
例え元の話がクソつまらない物だったとしても、脚色に脚色を重ね、笑える話に変えなければいけない。
他の演者の顔色を伺いながら話を盛り上げていく。
「あ、あはは……そうなんですね」
人気女子アナウンサーが愛想笑いをする。
不味い。何かやらかしてしまったのか、よく見ると他の演者にも愛想笑いしている人がいる。
こんな時、いつも思うのだ。
『自分以外の時間が止まってしまえばいいのに』と。
【時間よ止まれ】
以下
青羅紗の独り言
私の話をいつも読んでくださっている方々、ありがとうございます。
何となく始めてみた、書く習慣。
毎日少しずつ、創作短編小説のようなものが書けているので満足しています。
つまらない自己満足短編小説ですが、読んでくださる画面の前の貴方が存在することで書き上げる事が出来ています。本当にありがとうございます。
これからも青羅紗をよろしくお願い致します。