胸の鼓動が高鳴る。
なんて、部活系の漫画やアニメでは
よく言われるけど、
コンクール当日になっても、私はそんなことはない。
合唱部員の歌っている時の笑顔は、
その人の本気度にもよるけど
基本的には歌うことが幸せすぎて生まれる
自然な笑顔ではなく、あくまで表現の一部であり、
意図的に作った笑顔だ。
あくまで笑顔は演技。
口の開け方、口角の上げ方、
全て事前に練習して作られたもの。
それを合唱部員全員がやるのだから、
プログラムされたロボットのような、
あるいは合唱部の顧問に洗脳されているかのように
見えて、
正直ちょっと怖い。
私は合唱部のあの笑顔よりも、
カラオケで友達が多少下手くそでも心の底から楽しげに
歌うのを見る方が好きだ。
だから私は、歌は大好きだけど
合唱部に入ったことはとても後悔している。
不完全な僕は、いつか完全になるために、
僕なりに全力で今を生きている。
子どもと大人の狭間、17歳。
来年成人になると言っても、まだまだ成熟しきってない。
子どもでなくなりかけている思春期ならではの
悩みや葛藤、矛盾なんかを抱え、
色んな感情を受け止め、
自分なりの答えを見つけていく。
あと1年で大人になる僕は、
まだまだ不完全だけど、
今を必死に生きていることだけは確かである。
さよならの言葉はいらない、ただ・・・
いつか「久しぶり」って言い合える日が来るのを
待ってる。
大学を出たら、皆別々の場所で働く。
どんな仕事をするのかも、どう生きるのかも、
誰と過ごすのかも人それぞれ。
それに、社会に出たら沢山のことを学んで、
年齢だけでなく中身も少しずつ大人になっていく。
今のこのメンバーが揃うのは今日で最後。
でも、この先いくら成長して大人びても、
多少性格が変わっても、
それでも変わらないものがきっとあると思う。
それを信じて、それぞれの道に進む。
いつかまた会えることを願って、
「またね」
突然の君の訪問には驚いた。
数年前、夢を叶えるために修行してくるという置き手紙を残してどこかに行ってしまった君は、音信不通だったこともあり、もう二度と僕のところに帰って来ないと思っていた。君の将来の夢も知らなかった僕は、君が今どこにいるのかも、何の修行をしているのかも分からなかった。どうやら君は歌手を目指して歌の修行していたということに気づいたのは、つい最近の話。SNSでバズったのがきっかけで一躍有名になった大ブレイク中の歌い手・レイは、顔出ししていないため関係者以外は正体を知らない。だが、どこか聞き覚えのある声に加え、雑誌のインタビュー記事に載っていた「私は友人に修行してくるという旨の置き手紙を残して以来、友人に会っていないんです。修行してくると伝えただけで、歌手を目指していることは伝えてません」「いつか俺の友人が好きなアニメの主題歌を歌って、友人を驚かせてやりたいです」という文言が引っかかっていた。だから、レイの動画のコメント欄に、「レイが置き手紙を渡した友人って、もしかしてアニメが好きで、夏休みにレイと二人でアニメの聖地巡りをして、帰ろうとしたら電車がトラブルで運転見合わせになってて、運転再開するまでの暇つぶしでボウリングにいってみたら結構盛り上がって、気づいたら夜になってた思い出のある同級生だったりする?」と、君と僕しか知らないことを書き込んでみた。その3日後にレイ本人であり置き手紙の差出人である友人の君が僕の家に突撃してくるとは思わなかった。
「まさかもう正体がバレるとは」
そういって笑う君の顔はあの頃の面影を残しつつ、昔よりも少しだけ大人びていた。僕も頑張らないとな。僕の夢はアニメーター。いつか君が主題歌を務めるアニメの作画を担当して君を驚かせることが、今の僕の夢だ。
夏のある日の17時、
学校からの帰り道で、ゲリラ豪雨に見舞われた。
何だか雲が黒いなぁとは思っていたが、
ものの5分でここまて天気が急変するとは思わなかった。
雨は土砂降り。雷もゴロゴロ。
傘を持っていなかったから、
頭から足まで完全にずぶ濡れになった。
ここまで濡れたのは、小学校の着衣泳以来だと思う。
直ぐ側に駅の出入り口があったから、
ひとまずそこに避難し、駅の建物の柱により掛かる。
スマホの天気アプリで雨雲レーダーを確認してみると、
あと1時間は降り続くとのことだった。
さてどうしようかと考えていると、駅ナカにあるコンビニで傘のレンタルサービスをやっているのを見つけた。
早速コンビニに入ると、ペットボトル飲料のコーナーを見ていた女子高生の話し声が聞こえた。
「レインカフェって知ってる?雨の日にだけ現れるって噂の」
「それ都市伝説でしょ。前に気になってネットで調べたけど、そんな店出てこなかったよ。」
そういえば、僕の学校でもそんな噂が立っていた気がする。確かレインカフェの場所は神社の隣とか言っていた気がするが、そこは空き地になっていて、実際には店はない。
なんでそんな噂が立っているんだろうか。そんなことを考えながらレンタルサービスのビニール傘を一本借りて、駅を出る。
雨風が強い中、頑張って家の方向へ歩いていたが、ある時
猛烈な風が吹いてきて、傘が飛ばされてしまった。
傘は神社の鳥居の近くまで飛ばされていた。傘を拾い、早く家に帰ろうと思っていると、神社の隣にある店が目に入った。
「いらっしゃいませ」
看板には、レインカフェと書かれていた。