〔ありがとう、ごめんね〕
今日は僕の人生において重大で、僕は今日の事を一生覚えているだろう。
なぜなら今日は…親友が死んだ日だからだ。
僕は昨日、親友と喧嘩してしまった。そして…今日、親友が死んだ。
僕はまだ、親友に言いたい事も、伝えたい事も言えてないのに。
ただ一言「ごめん」って言えばよかったんじゃないか?
なんで言わなかったのか、今は過去の自分を悔やむ事しかできない。
その時僕は、あることを思いついてしまった。
言いたい事、伝えたい事を親友に直接言う方法。
……僕が、___をする事…。
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あの重大な日から、今日で丸2ヶ月経つ。
僕まだ、あの方法を実行に移せていない。
でも、……いや、今僕は決めた。決行は1か月後。親友が死んでから丸3ヶ月の日。
今思えば、丸1年の時にすれば、確実だったかもしれないと思うが、その時はそんな余裕はなかったのだろう。
そんな事考えてもいなかった。
そして当日。
今日はあの方法を……自○を実行する日だ。
大丈夫、きっと上手くいく。僕は決めたんだ。今更迷ったりしない。
ありがとう、親友。そして、ごめんな、親友。
「僕は……僕は、決めた!___ 」
プツッという何かが途切れたかのような小さな音が聞こえた。
僕の心の暗闇には、その小さな音が響き渡った。
〔逆さま〕
ああ、落ちてゆく。
真っ逆さまに、落ちてゆく。
あーあ、きっと終わりだな。
…そう思う夢を見た。よく見る夢だ。
夢は見る人の心を表すとかなんとかとよく言うけれど、本当にそうなのかもしれないと最近思っている。
だって、僕の心は今、現在進行形で落ちているから。こんな事を言っている間にも、少しずつ、ほんの少しずつ、だけど確実に落ちている。
現実が楽しくないと言えば嘘になる。でも、僕の心はそれだけじゃ満たされないみたいで、落ちるばかり。
食欲はそんなにだけど、夜は普通に眠れるし、学校にもちゃんと行けてるし、そこそこ楽しい。
でも、どこか欠けてる気がする。何かが足りないように思う。
それは、僕の過去に関係しているかもしれないし、してないかもしれない。
この前、………いや、何でもないや。
でも、心当たりはあるんだ。
きっとずっと誰にも話す事は無いだろうから、僕はこれからも逆さまに落ちて続けていくんだろうな。
…誰にも知られず、ずっと。
〔眠れないほど〕
眠れない夜。それは私にとってよくある夜で、眠れたとしても数時間で起きてしまう。
そして、眠れない夜にはいつも同じ事を考えてしまう。私の…好きだった人の事を。
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彼は、とっても優しい人だった。
でも、優しすぎて嫌われてしまう事もよくあったみたい。
…思いやりに溢れていて、優しくて、それでいて面白い。一緒にいるだけで心の底から楽しい人だ。
私は、そんな○●◎が、彼が、大好きだった。
でも…私が16になって結婚ができるようになる年、…彼は消えた。
どこかへ消えた。
行方は誰にも分からなかった。どれだけ捜しても彼は居なくて、置いて行かれたような気分になった。
…14年経った今でも、あれから彼を見た人は一人も居ない。私は、それでも捜し続けようと思う。
だって、彼は私の好きな人だから。
…一途すぎて笑われるかしら?あの人なら、『僕の事なんて忘れて、他のいい人を見つければいいのに』って言うかもしれないわね。でも、私は諦めたりしないわ。絶対にね。
この命が尽きるその瞬間まで、○●◎が、生きている事を、現れる事を、触れてくれる事を、ずっと、ずっと願い続けてるわ。きっと、叶うように。
あぁ、太陽の光が眩しい。もう朝なのか。
僕はこの空を何度見てきたのだろう。そして、これから何度見るのだろう。…もう数える気も失せた。
僕は、○●◎…。人間だ、………いや、人間だった。
今は…なんと言えばいいのだろう。よくわからない。
最近だんだん色々な事がわからなくなってきて、自分でも笑うしかない。
この物忘れは年のせいなのだろうか、それとも……いや、考えるのはよそう。
とりあえず今の状況を説明しようかな。
端から見たら僕は一人でぶつぶつ話してるおかしな人だけど、まぁ人が来ることはないしいいだろう。
…もうここら一帯は生物の生きられない場所だからな。
確かー…130年くらい前だったか?いや、200年程前だったか…。だめだな、本当に物忘れがひどい。だが100年以上前だ。それくらいまでは普通に人が住んでいたのだが…。もう今の風景からは想像もできないな。
今のここは砂漠のような、それより荒れ果てた場所だ。ここらにはもう僕しかいない。
水も無ければ草木も生えておらず、建物も風化してしまっている。
もう誰もここには来ないだろう。
僕はここでとても、とても長い間一人で過ごしている。
どれくらい経っているのか、僕にはわからない。
ただ、ただ、いつかこの孤独が終わる事を願って。
僕は…死ねるのか、?そもそも…僕は、生きているのか、?
わからない。僕がこうなった時の事ももう覚えていない。やっぱり年か…
ただ、僕はこれでも幸せなんだ。時が過ぎてゆくのを眺める事が好きでね。
もしかしたら、僕は望んでこうなったのかもしれない。…まぁ、今となってはそんなに関係のない事だが。
最近、時間が流れるのが早くてね。もう日が暮れてるよ。
ほら、だって空が暗いもの。まわりも暗くてよく見えない。
もう夜ならば、寝なければいけないね。
まだ話したい事はたくさんあったけど、また明日か。おやすみなさい
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あぁ、今日も太陽の光が眩しい。もう朝なのか。やはり時が流れるのは早いな。
今日も特にする事はないし、昨日の話の続きでも話すか。
えーと…昨日はどこまで話したかな…。あれ、覚えてないな…本当に物忘れがひどい。こんな風になってもまだ年齢に囚われなくてはならないなんて…。
ん?今、僕は何を話していた?
…これは、重症だな、、もう笑うしかできない。
はぁ、なんだか疲れたな。
僕は…、、
…なんだか、伝えたい事があった気がしたんだが…まぁいいか。
…おかしいな。まださっき起きたばかりなのに、いつの間に辺りが真っ暗になって。
僕がおかしいのか?
そうか、僕がおかしいのか。
ん?なんだ?
…急に、誰かの記憶が…?
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…そうか、そうなのか。
わかった。全部、全部その○●◎ってやつが悪いんだな。
…ん?なんだか急に明るくなったな。
あぁ、そうか、僕は消えるのか。
そうか、僕は異端だった。○●◎は、僕だった。存在しないはずだったモノ…か…。
全部、全部思い出した。
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僕は…僕は、もう消える。
あぁ、でもやっぱり僕は幸せだったと思うな。
うん、幸せだった。
「僕は、この太陽の下で___…」