言葉よりも深い潮騒の旋律が
私の脳神経をフィルタリングしました
砂浜にある様々な漂着物は
そのすべてが私を祝福しているようでした
朝だというのに騒々しい白波
錆びた道路標識の軋む音
私の世界を奏でます
スニーカーを海に浸すと
冷感が身体を這い上るようでした
「冬の海はやっぱり冷たいんだな」
なんて他人事に考える私がそこにいました
腰が浸かるあたりまで進んで漸く後悔し始めて
曇り空を見上げました
あなたを思い出してしまいました
振り返っても
何もありませんでした
天国も、鉄塔も、人々も、あなたも
それでも思い出してしまうから
忘れてしまいたいから
あなたから最も遠い場所へ
海の底へと向かうのです
海の底
揮発性の私が空間に溶ける
散らかった立方体を私で満たす
それは際限なく
私が世界を満たす
それでも君はいない
死が世界の外にあるならば
君は外側から世界を覗いているのだろうか
私を見ているのだろうか
薄明光線のように
私の世界を照らす
ただ君に会いたくて、今日も鉄塔に登る
君に会いたくて
ありふれた風景を写真に収める
通学路の落葉とひび割れたアスファルト
11階から見る夕焼けと工場の煙
あの子が飛び降りた鉄塔
その日聴いていた音楽を記録する
kuragariのきらめき
エリック・サティの夢見る魚
SuUの骨
私の1日のコピー&ペースト
1冊のノートに私を写す
私の閉ざされた世界の日記
忘れないように
閉ざされた日記
星一つない夜空の下で
木枯らしが私を刺し殺しました
身体から温度がなくなって初めて
あなたの温度を思い出しました
祈りが木枯らしに乗って
あなたへ届く時
冷え切ったその祈りは
きっと呪いなんでしょう
月が私の死体を照らしています
趣味の悪い衛星だと思いました
あなたを温めることはもうないけれど
それでも生き続けています
木枯らし
朝焼けの鉄塔
私が根元に立ち、見上げた時
世界は美しいと思えた
無骨な金属で構成された塔と
その隙間から見える紅掛空色
風は孤独を囁き
私は世界となる(ミクロコスモス)
この鉄塔で死のうと思った
冬がいい
頂上まで登って見る朝焼けは
きっと世界を肯定するから
美しい