金槌を右手に持っていた
それは父の血でぬらぬらと光っている
私のベッドには父の亡骸が眠っている
おそらく私が殺したんだろう
父のこめかみには打撲痕があり
そこから絶えず血が流れている
ベッドが汚れてしまったな、と
私は他人事のように考えていた
ふと視線を感じ振り向く
ドアの隙間から、父が覗いていた
私が殺した父が、私を覗いている
責め立てるような、告発するような目
目が覚めた
びっしょりと汗をかいていて不快だった
時計を見てようやく
先程までの映像は夢だったと自覚する
悪夢と呼ぶに相応しい夢だった
父に見られた時の焦燥を今も覚えている
だが、どうしてか。こんな悪夢を見るたびに
どうしようもなく、私は生を実感するのだ
こんな夢を見た
頭のいい誰かがタイムマシーンを発明したとして
過去や未来に行くのってすごくエネルギーが必要なんじゃないだろうか
相対性理論とかよくわかんないけど
すごく大変そう
もしかするとタイムマシーンの形は
みんなが想像するような乗り物ではないのかもしれない
高層ビルとかタワーとか、むしろ建物なんじゃないかな
そうだとすれば、過去や未来にどでかい建物が急に現れるのかな
なんかおもしろい
タイムマシーン
黄ばんだ月が私たちを覗いています
カーテンを閉めれば何も入ってこない
月明かりも社会の喧騒も
何もない
外界から遮断された狭隘な部屋を
常夜灯の橙色だけが照らしています
互いに触れ合うこともなく
ただそこにいるだけでした
部屋が夜で飽和している
結合と分解を繰り返し
私たちはただ目を合わせた
「どこにも行きたくないね」
「そうだね」
明日は天気がいいらしい
特別な夜
言葉よりも深い潮騒の旋律が
私の脳神経をフィルタリングしました
砂浜にある様々な漂着物は
そのすべてが私を祝福しているようでした
朝だというのに騒々しい白波
錆びた道路標識の軋む音
私の世界を奏でます
スニーカーを海に浸すと
冷感が身体を這い上るようでした
「冬の海はやっぱり冷たいんだな」
なんて他人事に考える私がそこにいました
腰が浸かるあたりまで進んで漸く後悔し始めて
曇り空を見上げました
あなたを思い出してしまいました
振り返っても
何もありませんでした
天国も、鉄塔も、人々も、あなたも
それでも思い出してしまうから
忘れてしまいたいから
あなたから最も遠い場所へ
海の底へと向かうのです
海の底
揮発性の私が空間に溶ける
散らかった立方体を私で満たす
それは際限なく
私が世界を満たす
それでも君はいない
死が世界の外にあるならば
君は外側から世界を覗いているのだろうか
私を見ているのだろうか
薄明光線のように
私の世界を照らす
ただ君に会いたくて、今日も鉄塔に登る
君に会いたくて