びーえる注意注意!!
仲間うちでのおれの誕生日祝いと称してのただの飲み会のその後。
終電無くなったからとおれの家に転がり込んできたアイツと帰りに寄ったコンビニでまたアルコールとケーキを買い込んでふたりで軽く2次会。
楽しくていつもより早めのペースで酔いが回る俺たち。
気のせいかいつもより距離も近い気がする。
目の前には小さいけどちゃんとしたホールのケーキとコンビニ惣菜とアルコール。
せっかくだからとケーキに付いてたろうそくにも火を着ける。
さすがにはたちを過ぎると誕生日ぐらいではそんなに感動する事なんてないけど、これはちょっと来るものがあるな。
手のひらに乗せてゆらゆら揺れる炎を見つめながらちょっとした感動に浸ってると横から声が掛かった。
「願い事しろよ」
「え…いやいいよこの年で願い事とか」
「いいじゃん別に年は関係ないだろ」
ぐっと近づいてきてろうそくの火を覗き込みそしておれを見上げて笑う。
「ちょっとお前近いって」
間でろうそくの火が揺れる。
「何が?」
気にせず近寄ってくるアイツ。わざとやってんじゃないのか?まじむかつく。
「危ないよ、火が点いてる」
「いいからお願いしろよ」
俺の手からケーキを奪い取って目の前に差し出してくる。
「はよ」
「分かったよ」
観念して心のなかで願い事唱えるふりをする。
「はい。願ったよ、いいから食べよ」
ケーキをちょっと押し返してろうそくの火を消す。
ちょっと目の前の男は考える素振りを見せて
「なに願ったんだよ」
訝しげに訊ねて来た。
「別に何でもいいだろ」
顔を背けて言うと、ふぅんと含んだ感じの返事とも言えない返事が聞こえた。
こっちの気持ちも知らないで。
「まぁいいけどほら」
振り返ると目の前にフォークに刺さった切り取られたケーキ。
「自分で食べれるよ」
「いいからいいから誕生日特権。てか食べろ。オレ様がわざわざ食べさせてやってるんだから」
「何だよそれ」
酒の勢いと言うことにしてそのままケーキにかじりついた。
ケーキは甘くて切ない味がした。
「で、何を願ったのよお前は?」
誰が言うかよ。
叶わない願いなんて。
(揺れるキャンドル)
キラキラ光るイルミネーション。
来たるサンタさんの日に向けて飾られたんだろう。
青や白、黄色、赤その他色とりどりのLEDがあちらこちらで存在をアピールしてる。
主役はやはりカップルなのだけど。
1人でその中を歩くのも案外悪くない。
普段は寂しげな街路樹たちもこの時ばかりはいろんな光をまとってとてもきれいだ。
右に左に見惚れて思わず笑顔になる。
「ほんとにきれい」
寒い空気にそっとため息を混ぜる。
きらめく景色のなかに浮かぶ2つの笑顔。
1人はずっと見つめてた人でもう1人はその人が見つめる人。
見つめるその人は男のひとだったから付き合ってるなんて思いもしなかった。
仲のよい友だちなのだと。
仲よくて羨ましいなーって。
でも、2人は付き合っているのだと。聞いてしまった。
よくよく考えてみたら合点が行くことが沢山あって。
何より2人の間の空気が、微笑んでる姿が、あたしが入る隙もないぐらいほんとに1ミリもないぐらい幸せそうでそっと想いに蓋をしてしまった。
いつもはクールそうなのにあんなにふにゃふにゃに笑いかけてるなんて、あたしには太刀打ちできないじゃない。
相手のひとも嫌いじゃないの。
お似合いで本当に応援してしまいたくなる。
でもさ、
「あたしも、ちゃんと好きだったんだよ」
周りのキラキラが滲んで見えた。
(光の回廊)
何度も何度も違うのだと言い聞かせた。
でもやっぱり会うと近付きたくて構ってほしくて触れたくて。
でもこの想いに気付いて欲しくなくて。
それでもその笑顔のなかに居たくて。
はらはらと、降り積もるこの想いは。
もう、恋と…認めてもいいのかな。
錯覚でもなくただただ好きだと。
求めても許されるのだろうか。
返してくれなくてもいいよ。
それでも、僕は君のことが好きです。
(降り積もる想い)
隣り合わせて座った。
みんなの輪の中にいるアイツ。
話に夢中になっているその隙に。
アイツのトレーナーの裾からはみ出る紐と同じ自分の紐とこっそり蝶結びしてやった。
これでお前は俺から離れられない。
なんてね。
蝶結びなんてすぐに解けてどこかに行ってしまうよ。
ずっと隣になんて。
無理なのかな。
(時を結ぶリボン)
びーえる注意報!
「手を出して」
言われるがままに彼の方に手を差し出すと、その手をそっと包まれる。
「なに?」
「念をかけておいた」
にこっと笑われチュッと音を立てて包まれた手にキスされる。
「うわ…たまに変態っぽいよね」
手を引っ込めようとするけど、強い力で包まれたまま抜けない。
「ちょっと離してよ」
「お前は大丈夫…大丈夫。自信を持って」
本当に念を込めるように優しく何度も手の甲にキスされる。
「もういいから。ほんと離して」
居た堪れなくなって顔をそらす。
「そぉ?」
名残惜しそうにまたそっと口付けてやっと解放された。
「もう一体何なんだよー」
「うーん、まぁなんかあった時のねおまじない。困った時にでも思い出して」
「バカじゃねぇの」
後ろに隠した口付けされたそこをこっそり手で撫でる。
ほんと、バカじゃねぇの。
「まぁ気休めでもね」
目の前の彼は、悪態に気にせずほんわか笑った。
あれから不安なとき、自信がなくなって心が潰されそうなとき、落ち着かないとき、縋りたいとき。
手を握りしめて抱き抱える癖がついた。
「ほんと、気休めだよな」
すげぇ効くけど。
(手のひらの贈り物)