いちごミルクパン

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6/27/2025, 7:31:10 AM

 嫌な奴がいる。
 初めは優しかった。俺が困っていたら、すぐに気づいてくれる、優しい奴だった。俺もそれに応えたくて、奴に好意を持った。
 だが、奴は日を追う事にひねくれていったのだ。わざとなのか、単に余裕がなくなったのかは分からない。奴の感情の爆発に、俺はついていけなくなった。
 いや、ついていけないというよりもむしろ、俺と奴は似ていたのだ。気分屋で、尊大で、世間知らずで。
 だから俺は、奴が嫌いな訳ではない。ただただ、その言動が嫌なだけだ。最後の言葉はたぶん、ありがとう。


                   題:最後の声

4/8/2025, 10:39:35 AM

「俺とお前は、対等でありたいから。奢りとか、やらなくていいって。」
出会った頃のこいつの台詞。
 なぜか、ふと思い出した。

 かく言う今、俺はその友達に昼食を奢っている最中である。
 計1067円。冗談じゃねえ。
 俺は、数点のパンやら菓子やらの入った袋をぶっきらぼうに差し出した。
「さんきゅ。」
笑顔で受け取りやがる。そして袋をガサガサし、無駄に綺麗な手でつまんだ、かつて5円だったチョコを差し出した。はいプレゼント、と。

 ああ、そうか。これだ、この一口にも満たないようなチョコが、少年時代を想起させたのか。
「俺が買ったんだよ。」
 どういうわけか、その1粒が嬉しかった。



               題:遠い約束

3/26/2025, 11:23:13 AM

いつもは花の匂いが苦手だけれど、

彼女からの花束には、七色の香りを見た。


                     題:七色

3/24/2025, 11:30:51 AM

 もう二度と君を傷つけないと決めてから、また傷つけるのをもう二度としない。
 そう決めてから君を悲しませてしまったときの沈黙は、もう二度と思い出せない。


               題:もう二度と

3/15/2025, 1:49:19 PM

 ぼくはずっと、彼を知らないでいた。
 知らなかった期間が長すぎたから、これからも知らないでいるふりをしてしまうのだろう。


            題:心のざわめき

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